3)The histology of Nanomia bijuga (Hydrozoa: Siphonophora)
(シダレザクラクラゲ(クダクラゲ類)の組織学)
Samuel H. Church, Stefan Siebert, Pathikrit Bhattacharyya, Casey W. Dunn
Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution(2015)
DOI:10.1002/jez.b.22629 ▶ 見る
4)The evolution of siphonophore tentilla for specialized prey capture in the open ocean
(外洋における特殊化した獲物捕獲のためのクダクラゲ触枝の進化)
Alejandro Damian-Serrano, Steven H. D. Haddock, Casey W. Dunn
Proceedings of the National Academy of Sciences(2021)
DOI:10.1073/pnas.2005063118 ▶ 見る
5)Jellyfish: A Natural History
(クラゲ ― その自然史)
Lisa-Ann Gershwin
The University of Chicago Press(2016)
DOI: 10.7208/chicago/9780226287706.001.0001 ▶ 見る
6)Distributed propulsion enables fast and efficient swimming modes in physonect siphonophores
(フィソネクト類クダクラゲにおける分散推進は、高速かつ効率的な遊泳様式を可能にする)
Kakani Katija, John O. Dabiri ほか
Proceedings of the National Academy of Sciences(2022)
DOI:10.1073/pnas.2202494119 ▶
見る
まるで海が寺院
本格的な冬を迎える伊豆半島の12月、風や潮流の影響で、普段は見ることの少ない外洋の浮遊生物たちが浅瀬に集まる時があります。 小さなトウモロコシのような形をしたヨウラククラゲもそのその一種で、仏堂の天蓋などから垂れ下がる、極楽浄土を表す仏具が名前の由来です。 そう思って見ると、辺り一面、行けども行けども瓔珞にあふれる海は、とてもありがたく感じますが、餌の形をした触手で稚仔魚をおびき寄せ、毒を発射して捕食するという肉食のハンターでもあります。
概要
和名:ヨウラククラゲ
英名:Red-spotted Siphonophore
学名:Agalma okenii Eschscholtz, 1825
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
分類・分布
【分類】刺胞動物門 > ヒドロ虫綱 > クダクラゲ目 > ヨウラククラゲ科 > ヨウラククラゲ属 > ヨウラククラゲ
【分布】暖海の外洋域、水深200m程度までの表層
特徴・雑学
ヨウラククラゲは、暖かい海の外洋に生息し、水深200mほどまでの表層を漂うクダクラゲの仲間です。 名前の由来は、仏具の「瓔珞(ようらく)」に似ていることからきています(1、2)。
ヨウラククラゲの名前の元となった仏具の瓔珞
▲ 極楽浄土を表すと言われる
出典:Mattes / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
一つではない「群体」という生命体
ヨウラククラゲを含むクダクラゲの仲間は、単独の個体ではなく群体生物です。 先端部にある出芽帯(budding zone)から発生した個虫には、それぞれ役割があり、浮力を調整する気泡体(pneumatophore)、推進力を生み出す泳鐘(えいしょう/nectophore)、摂餌や消化を担当する栄養体(gastrozooid)、 触手や感覚機能に関わる感触体(tentacular palpon)、生殖を担当する生殖体(gonophore)などに分化しています。
これらの個虫は全て、中心を通る「幹(stem)」と呼ばれる軸に連結し、ひとつのクダクラゲとして機能します(3)。
ただし、すべてのクダクラゲで、これらの役割の個虫が揃っているわけではなく、気泡体を持たない種類や、泳鐘を欠く種類なども存在します。
多彩なクダクラゲが存在し、すべて群体性の生物である
能あるクダクラゲは触手を隠す?
クダクラゲの泳鐘部や栄養部は、個虫が密に連なっており、かなり硬い構造をしています。 先端には小さな気泡体があり、その下に規則正しく並んだ泳鐘が連なります。 泳鐘部に続く栄養部の各栄養個虫からは、赤茶色の側枝(tentillum)が多数並んだ触手が伸びます。
浅瀬の観察では触手を伸ばしていないヨウラククラゲが多い印象ですが、栄養体付近に収納された触手は、赤茶色の刺胞嚢が塊となって並ぶため、枝豆の莢に並ぶ豆のように見えます。
ヨウラククラゲの栄養部と伸びる触手
▲ 赤茶の「豆」は収納された触手
必殺の刺胞が餌にそっくり?・ルアーを使うクラゲ
側枝の赤茶色の部分は「刺胞嚢(しほうのう/cnidial sac)」と呼ばれ、その内部には刺胞叢(しほうそう/cnidoband)が螺旋状に巻き込まれて収納されています(4)。 刺激を受けると刺胞叢が展開し、白い終糸(しゅうし/terminal filament)とともに獲物へ絡みついて毒の刺胞を発射する、小さいながら精巧な捕獲装置です。
赤茶色の刺胞嚢と2本の白い終糸の組み合わせは、小型甲殻類であるカイアシ類に似ているともいわれ、獲物をおびき寄せるための疑似餌のような働きをするのではないかとも考えられています(5)。
伸びた触手に点在する刺胞嚢と終糸
▲ 触手はとても細い
クダクラゲの触手の模式図
クダクラゲの推進制御能力を水中ロボットに応用する
ヨウラククラゲの泳鐘は、最大で36個程度までとされています。 この複数の泳鐘が協調して姿勢や推進方向を制御する特殊な遊泳方法を持っています。
この「分散推進」の仕組みは、水中ドローンやソフトロボティクスなどの工学研究にも応用が期待されており、高効率な水中推進システムを実現するために、クダクラゲの分散推進が研究されています(6)。
整然と並ぶヨウラククラゲの泳鐘部
▲ 列ごとの一段ずつが個別のクローンである泳鐘体
食・利用
食用の利用はありません。
毒・危険性
大量に現れることがありますが、刺胞を持つため素肌に触れると痛みがあります。すべての素肌を覆っての観察が必要です。
泳鐘は脱落しやすい
ボウズニラに泳鐘は無い
参考資料
▶ 見る
▶ 見る
Wikipedia
Wikimedia Foundation
▶ 見る
(ヨウラククラゲ)
公益財団法人 黒潮生物研究所
黒潮生物研究所(掲載年不明)
▶ 見る
(シダレザクラクラゲ(クダクラゲ類)の組織学)
Samuel H. Church, Stefan Siebert, Pathikrit Bhattacharyya, Casey W. Dunn
Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution(2015)
DOI:10.1002/jez.b.22629
▶ 見る
(外洋における特殊化した獲物捕獲のためのクダクラゲ触枝の進化)
Alejandro Damian-Serrano, Steven H. D. Haddock, Casey W. Dunn
Proceedings of the National Academy of Sciences(2021)
DOI:10.1073/pnas.2005063118
▶ 見る
(クラゲ ― その自然史)
Lisa-Ann Gershwin
The University of Chicago Press(2016)
DOI: 10.7208/chicago/9780226287706.001.0001
▶ 見る
(フィソネクト類クダクラゲにおける分散推進は、高速かつ効率的な遊泳様式を可能にする)
Kakani Katija, John O. Dabiri ほか
Proceedings of the National Academy of Sciences(2022)
DOI:10.1073/pnas.2202494119
▶ 見る