ショウジンガニ|フグに乗るメガロパ幼生

Guinusia dentipes (De Haan, 1835)

概要

ショウジンガニ:Guinusia dentipes (De Haan, 1835) メガロパ幼生

撮影地:静岡県伊東市 水深5m

分類・分布

節足動物門 > 軟甲綱 > 十脚目 > ショウジンガニ科 > ショウジンガニ属 > ショウジンガニ

岩手県以南、韓国、台湾、南太平洋の磯や転石。

特徴・雑学

成体のショウジンガニは、丸みを帯びた四角形の甲殻をしており、凹凸のある表面には硬い毛が生えています。
生体の色は褐色と赤が混ざり、海藻の生えた岩礁に馴染むような色合いをしています。

【メガロパ幼生の姿】
晩秋から初冬になると雌は「外子持ち」と呼ばれる抱卵をします。 卵から孵化した姿はミジンコのような『ゾエア幼生』として誕生し、海中を浮遊生活します。 浮遊生活をしながら成長して脱皮を繰り返すと「エビとカニの中間」のような段階の『メガロパ幼生』となり、海藻や流れ藻の間などでしっかりと足を使って生活します。
その後、第一幼蟹となって海底生活を始め、第二幼蟹期を経て成体となります。 第一幼蟹が見られるのは春から初夏なので、孵化後のゾエア幼生とメガロパ幼生の期間は6か月に及ぶと考えられています(*1)。 三重県の報告では、5月初旬に「おびただしい数のメガロパ幼生が水面を覆いつくしていた」とあり、ゴマサバの胃の内容物から大量のメガロパ幼生が採取されています(*2)。

一般的なカニのメガロパ幼生は小さくて見えないほどですが、ショウジンガニのメガロパ幼生は甲長1センチ弱ほどと例外的に大きく、肉眼でもはっきり見えます(*3)。
つかまりやすい物体には付いたら離れない傾向があり、メガロパ幼生を観察したダイバーが海から上がると、体にメガロパ幼生が沢山ついていることがよくあります。

【魚に乗るメガロパ】
映像は、ショウジンガニのメガロパ幼生がフグのキタマクラにつかまっている様子です。 フグは邪魔なメガロパを取って欲しいのか、ホンソメワケベラの近くに行きます。 ところが、ホンソメワケベラは幼生に気づく様子が無く、キタマクラは幼生を取ってくれないホンソメワケベラに怒っているようにも見えます。
メガロパ幼生はキタマクラを移動手段と考えているかどうかは不明です。

参考動画:ショウジンガニ

▶ ショウジンガニの詳細ページを見る

参考動画:欠損脚を再生するショウジンガニ(再生芽)

▶ 脚を再生するショウジンガニ(再生芽)の詳細ページを見る

食・利用

ショウジンガニは、身の量こそ多くありませんが、非常に濃厚なだしが出ることで知られています。
沿岸の漁師町では、漁師や民宿の家庭料理として「ショウジンガニのみそ汁」が昔から親しまれてきましたが、 刺し網やエビ網に「かかってしまった」程度であり、一般の流通量は少なく、市場に並ぶことは殆どありません。
そのままぶつ切りにして鍋へ入れるシンプルなみそ汁ですが、その濃厚な味わいは驚くほどです(*4)
伊豆半島の稲取には「ひっこくり」と呼ばれる磯でのショウジンガニ漁があり、捕獲体験とグルメが楽しめます(*5*6)。

毒・危険性

毒の情報はありません。
『フクロムシ』( Sacculinidae)が寄生している場合がありますが、ショウジンガニ自体の味の変化や毒化はありません。 フクロムシが寄生している場合、"カニのふんどし"と呼ばれる腹部に黄色い袋状の物体がありますが、それがフクロムシの卵巣で毒性はありません。 フクロムシは甲殻類であり食べることも可能ですが、気になる場合は除去すれば問題ありません。

参考動画:ショウジンガニに寄生するフクロムシ

参考資料

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