概要
和名:スジホシムシ
英名:Peanut worm
学名:Sipunculus nudus Linnaeus, 1766
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:10月
- 主な水深:5m
- 映像特徴:スジホシムシが砂に潜る様子
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 総ビットレート:56664kbps
- 長さ:0 分 32 秒
- サイズ:222MB
分類・分布
【分類】環形動物門 > ホシムシ目 > スジホシムシ科 > スジホシムシ属 > スジホシムシ
【分布】奥陸奥湾以南の日本、世界各地
特徴・雑学
スジホシムシは、細長い円筒形の体をもち、刺激を受けると先端の吻(ふん)を体内へ引き込んでピーナッツのような丸い形になることから、英名はPeanut wormと呼ばれます。
体にはミミズのような体節はなく、表面には細かな横じわがあり、淡い褐色から灰褐色をしています。体の先端には伸縮自在の吻があり、その先端の触手を使って砂の中の有機物や微小生物を集めて食べます。
主に砂浜や干潟、水深数メートルから数十メートルの砂底・砂泥底に生息し、普段は体の大部分を砂の中に潜らせて生活しています。
スジホシムシの全体
▲ ピーナッツに見えないこともない…
海底の砂を綺麗にする・見えない掃除屋
スジホシムシは、海底の砂に含まれる有機物を食べる堆積物食者(Deposit feeder/デポジットフィーダー)です(1)。 デポジットフィーダーとは、砂や泥を取り込み、その中に含まれるデトリタス(生物の遺骸や排泄物が分解された有機物)、微細藻類、細菌などの有機物だけを消化して栄養とする生物のことです。 スジホシムシは、伸縮自在の吻(ふん)を砂の中や表面へ伸ばして砂粒とともにこれらの有機物を取り込み、栄養分だけを消化したあと、残った砂を排泄します。 この摂餌活動は、海底の有機物を循環させるだけでなく、砂をかき混ぜて酸素を深部まで届けることで底質環境を改善し、健全な砂底環境の維持にも重要な役割を果たしています。
海底の砂や泥に含まれる有機物を消化して排出する
スジホシムシを生産する・人工種苗の研究
スジホシムシは雌雄異体で、オスとメスが別々の個体です。 生殖細胞は体腔内で成熟したあと腎管へ集められ、オスとメスは精子と卵を海中へ放出します。 受精は海水中で行われる体外受精で、多くの個体が同時に放卵・放精することで受精率を高めていると考えられています。 受精卵はプランクトン生活を送る幼生へと成長し、その後海底へ着底して変態し、砂の中で生活する幼体になります(2)。
繁殖時期は地域によって異なり、熱帯域では周年繁殖、温帯域では春から夏に繁殖する個体群が報告されています。 このような繁殖生態を利用して、近年では釣り餌や食用としての需要に対応するため、人工採苗や養殖技術の研究も進められています(3)。
消える?星口動物門
スジホシムシは、かつては独立した星口動物門(Sipuncula)に分類されていました。
しかし、近年の分子系統解析により、ホシムシ類は環形動物から進化したグループであることが明らかとなり、現在では環形動物門に含める分類が主流となっています。
一方、「ホシムシ類(Sipuncula)」という名称は現在も用いられており、独立した「門」ではなく、環形動物門に含まれるホシムシの仲間全体を指す分類群名として使用されています。
*綱(Class)ついては未確定ということで、本ページの分類に綱を表示していません。
食・利用
スジホシムシは世界各地で食用や釣り餌として利用されています。 日本では食用とされる地域は限られていますが、中国や東南アジアの一部では高級食材として流通しており、養殖も行われています。 ベトナムでは乾燥させたホシムシの仲間は高級珍味 Sa sung であり、様々な料理に利用されます(4)。
希少になったスジホシムシ・輸入とその問題点
スジホシムシは古くから釣り餌として利用されており、日本ではマダイやクロダイ、根魚などを狙う海釣りの生き餌として流通しています。 しかし、国内の資源量が減少したことから、一部は中国やベトナムなど海外からの輸入に依存するようになりました。 環境省の海洋生物レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に選定されており、野生個体の持続的な利用が課題となっています。 また、生きた釣り餌の輸入は、外来生物や病原体の持ち込みにつながるおそれがあることから、生物多様性の保全や水産資源管理の観点から、その流通経路や適切な管理の重要性が指摘されています(5)(6)。
毒・危険性
人に対する毒や危険性はありません。
自然の状態で本体を見ることは無い
産卵のための栄養摂取の時のみ吸い付く
参考資料
- JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 原色日本海岸動物図鑑
保育社
内海冨士夫著 - 原色動物大図鑑Ⅳ
北隆館
岡田要、内田亨著 - 1)Ecology of Deposit-Feeding Animals in Marine Sediments
(海洋堆積物に生息する堆積物食動物の生態学)
Glenn R. Lopez, Jeffrey S. Levinton
The Quarterly Review of Biology, Vol. 62, No. 3, pp. 235–260(1987)
DOI: 10.1086/415511
▶ 見る - 2)Population Structure and Reproductive Biology of the Bait Worm Sipunculus cf. nudus in
Northeastern
Brazil
(ブラジル北東部における餌用ホシムシ Sipunculus cf. nudus の個体群構造と繁殖生物学)
Bruna de Jesus Lima, Bruno Roger C. de Oliveira, Larissa de Souza Santos, Leonardo de Mattos Oliveira, Maria da Conceição de Almeida, Jailza Tavares de Oliveira Silva, Pedro de Mello Affe, Martin Lindsey Christoffersen, Carlos Eduardo Lopes da Rocha
Marine Ecology(2025)
DOI: 10.1111/maec.70083
▶ 見る - 3)Artificial Propagation and Seed Breeding Technology of Sipunculus nudus
(スジホシムシの人工繁殖および種苗生産技術)
Journal of Tropical Biology(熱帯生物学報)
LIU Tianmi, FENG Quanying, YANG Mingqiu, FU Yifan, WU Pengfei
DOI: 10.15886/j.cnki.rdswxb.2013.01.017
▶ 見る - 4)スジホシムシのお粥・サイゴンの奇妙な名物(ベトナム)
(スジホシムシのお粥・サイゴンの奇妙な名物)
ベトナム観光 | イベント、おすすめスポット、観光ガイド、通訳サービス
Betonamu.jp(ベトナム生活支援・観光情報チーム)
▶ 見る - 5)釣り餌動物の流通および野外への侵入状況
季刊「Ebucheb(エブオブ)」 Vol.76
海の環境NPO法人 OWS(特定非営利活動法人 OWS)
▶ 見る - 6)Current State of Aquatic Animals Sold as Sport Fishing Bait in Western Japan
(西日本における釣り餌として流通される水生動物の現状)
斉藤英俊、丹羽信彰、河合幸一郎、今林博道
広島大学総合博物館研究報告 第3号、pp.45–57(2011)
DOI: 10.15027/32070
▶ 見る