サナダユムシ

海底を這う、長い口

Ikeda taenioides

砂の海底に伸びる細い生き物は、サナダユムシの「吻」です。 2メートル以上伸びる吻で海底のデトリタスを砂ごと本体の口へ運びます。 本体は1mほどの深さにいるとされ、通常見ることはありません。

🔬 専門資料・出典引用(8件)

概要

和名:サナダユムシ

英名:giant spoon worm

学名:Ikeda taenioides (Ikeda, 1904)

  • 撮影場所:静岡県沼津市
  • 撮影時期:2021年
  • 主な水深:20m
  • 映像特徴:長く伸びるサナダユムシの吻、吻で運ばれる砂

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

  • コーデック:H264-MPEG4AVC
  • 解像度:1920x1080
  • フレームレート:59.94
  • 総ビットレート:60330kbps
  • 長さ:5 分 46 秒
  • サイズ:2.43GB

分類・分布

【分類】環形動物門 > 多毛綱 > ユムシ目 > サナダユムシ科 > サナダユムシ属 > サナダユムシ

【分布】陸奥湾、女川湾、東京湾、相模湾、瀬戸内海、天草、対島

特徴・雑学

サナダユムシ(Ikeda taenioides)は、環形動物門ユムシ亜綱サナダユムシ科に属する海産動物です。 世界最大のユムシ類として知られ、日本沿岸に多く分布します。

本体は砂の中・海底を這う口の先

一見すると海底を這う細長い帯状の生き物のように見えますが、これは吻(ふん)と呼ばれる採餌器官です。 吻の付け根には口のある本体がありますが、砂泥中に隠れており普段目にすることはありません。 1904年の池田岩治の観察では、巣穴は深さ約70~90 cmに達し、本体はその最深部に位置していました。

サナダユムシは1904年、日本の動物学者・池田岩治(Iwaji Ikeda)によって Thalassema taenioides として新種記載されました(1)。 その後、1913年に新属 Ikeda が設立され、現在の学名 Ikeda taenioides となりました。 属名の Ikeda は、池田岩治にちなみ命名されたものです。

運ばれる砂・吻のベルトコンベアー

吻は平たく細長く、収縮と伸長を繰り返しながら海底をゆっくり這うように伸び、長さは3メートルを超えると思われる状態も観察できました。 吻先端で海底の表面にある有機物や微生物を砂ごと集め、砂の中の本体にある口へと、ベルトコンベアーのように運びます。 映像では筒状に丸まった吻の内側に、口へと運ばれる砂が確認できます。
刺激を受けると吻は素早く縮み、巣穴の中へ引き込まれます。

88年ぶりに確認された本体

本体は太い円筒形で、前端には口、腹側には一対の腹剛毛、後端には肛門があります。 2021年には88年ぶりに本体の採集に成功し(2)、その形態は1907年に池田が記載した内容とほぼ一致することが確認されました。 また、本体の体色には淡褐色から赤褐色までの個体差があることも明らかになりました。

消えゆく生物・干潟とサナダユムシ

サナダユムシは本州から九州にかけて分布する日本固有種ですが、現在では各地で確認例が少ない希少な動物となっています。 広島県では尾道市・竹原市・呉市の潮間帯で生息が確認され、生息状況は比較的安定しているとされています(3)。 一方で、生息環境である浅海域の泥底や干潟は沿岸開発などにより減少しており、広島県では準絶滅危惧(NT)、岡山県では絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に指定されています。 また、和歌山県では情報不足(DD)として評価されており、各地で生息状況の把握や保全が課題となっています。

イメージが変わる?・あの真田が名前の由来(かも)

「サナダユムシ」の名前は、海底を這う平たい吻(ふん)が、日本の伝統的な平織りの紐である「真田紐」によく似ていることに由来します。 真田紐は、日本で古くから使われてきた平たく丈夫な織紐で、戦国武将・真田氏に由来するという説が広く知られています(4)

食・利用

サナダユムシについて、食用とする情報は確認できません。
ユムシ類の中には食用とされる種類もおり、韓国では近縁のユムシ(Urechis 属)が「ケブル(개불)」と呼ばれ、刺身や焼き物などで食べられています。 日本でも、福岡や北海道などの一部地域で食用にされる他、釣り餌として利用されます(5)

毒・危険性

人に対する毒性、危険性の情報はありません。

ユムシの吻だけにも見えるミサキヒモムシ ミサキヒモムシは弱そうな生物だが、猛毒のテトロドトキシン(フグ毒)があり、致死量を含む

致死量に相当するテトロドトキシン(フグ毒)を持つ

美しいゴカイの仲間「オオナガレカンザシ」 美しい姿だがゴカイの仲間のオオナガレカンザシ

美しいのは先端部であり、ゴカイの体は棲管のなかにある

参考資料

  • JAMSTEC BISMaL(分類情報)
    ▶ 見る
  • World Register of Marine Species(分類情報)
    ▶ 見る
  • 原色動物大図鑑Ⅳ・岡田要、内田亨共著・北隆館
  • 1)On Three New and Remarkable Species of Echiuroids(Bonellia miyajimai, Thalassema taenioides and T. elegans)
      (3種の新しく注目すべきユムシ類について)
      Iwaji Ikeda
      Journal of the College of Science, Imperial University, Tokyo, Japan, Vol. XXI, Article 8(1907)
      DOI: なし
    ▶ 見る
  • 2)Giant spoon worms pumped out of their deep burrows: First collection of the main bodies of Ikeda taenioides (Annelida: Thalassematidae: Bonelliinae) in 88 years
      (深い巣穴から吸い出された巨大なユムシ――サナダユムシの本体を88年ぶりに採集)
      Ryutaro Goto, Yumi Henmi, Yuto Shiozaki, Gyo Itani
      Plankton and Benthos Research, 16巻3号, 155–164頁(2021)
      DOI: 10.3800/pbr.16.155
    ▶ 見る
  • 3)広島県の絶滅のおそれのある野生生物(第4版)―レッドデータブックひろしま2021―
      レッドデータブックひろしま改訂検討委員会(編)p388
      広島県(2022)
      DOI: なし
    ▶ 見る
  • 4)真田紐とは
      中川政七商店の読みもの
      株式会社中川政七商店
    ▶ 見る
  • 5)ユムシ
      じざかなび福岡
      福岡県水産海洋技術センター
    ▶ 見る