クマノアシツキは、岩の下などにひっそりと暮らすゴカイの仲間です。 頭部から伸びる大型の突起と、岩礁や岩の下を這う独特な姿から、まるで地球外生命体のような印象を与えます。
概要
和名:クマノアシツキ
英名:該当なし
学名:Acrocirrus validus Marenzeller, 1879
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:2025年8月
- 主な水深:3メートル
- 映像特徴:岩礁や岩の下を移動する姿
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 総ビットレート:39535kbps
- 長さ:1分14秒
- サイズ:353MB
分類・分布
【分類】環形動物門 > 多毛綱 > スピオ目 > クマノアシツキ科 > Acrocirrus属 > クマノアシツキ
【分布】本州太平洋岸の中部以南
特徴・雑学
クマノアシツキは、岩の下や砂礫の隙間などにひっそりと暮らす小型のゴカイの仲間です。 体長は数cmほどの種類が多く、細長い円筒形の体の前方には、触手のように細長く伸びた触角や鰓を備えています。 昼間は物陰に潜んでいることが多く、有機物や微小な餌を集めて生活しています(1)。
まるで古典の火星人・頭の脚はいったい何?
頭部からは腕のような細長い突起が伸びています。 このうち最も長い1対は周囲を探る触手として働きます。 また、前方の突起の先端には眼のように見える小さな点があります。 しかし、これは物を像として見るための眼ではなく、光や水の流れなどを感じ取る感覚器と考えられています。 「クマノアシツキ」という名前は、腹側に並ぶ剛毛の先端が熊の爪のような形をしていることに由来するといわれています。 ただし、この鉤爪は非常に小さいため、肉眼ではほとんど確認できません。 一方で、紀伊半島の熊野で採集されたことから「クマノ」の名が付いたという説もあります(2)。 細長い体をくねらせながら岩の下や砂の中を這うように移動し、その動きは見た目以上に素早く俊敏です。 独特な姿形は、まるで地球外生命体のような印象ではありますが、その一方で海底に堆積した有機物を食べることで海底環境の維持に役立っており、海の生態系を支える重要な生物です。
クマノアシツキの鉤爪、頭の触手
▲ 1対は他より長い
▲ 鉤爪になっているようにも見える
地球の海を制覇する?・多様なクマノアシツキ科
クマノアシツキ科は、浅い潮間帯から数千メートルに達する深海に棲む Flabelligena hakuhoae まで(3)、幅広い環境に生息するゴカイの仲間です。 岩礁域の海底を這って生活する底生種だけでなく、水中を遊泳しながら暮らす深海性の種類も知られており、多様な環境へ適応しています。
この仲間は1969年に独立した科として設立され、その後、新しい種類の発見や形態の比較、さらにDNAを用いた分子系統解析によって分類が大きく見直されてきました(4)。 現在では、クマノアシツキ属 Acrocirrus をはじめとする底生種に加え、深海を遊泳する Swima や Teuthidodrilus も同じクマノアシツキ科に含まれることが明らかになっています。 一方で、属や種の境界が十分に整理されていないものも多く、未記載種の存在も指摘されていることから、クマノアシツキ科の分類は現在も研究が続けられている分野です。
東南アジアでは食用になり、釣り餌としても利用される
食・利用
食用や漁業利用はされていません。
毒・危険性
毒性や刺傷の危険性は知られていません。
夜に活発に活動し、夜釣りで釣れてしまうほどだという
浅瀬の岩の下に棲むウロコムシの一種の水中映像です。
参考資料
- 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)BISMaL
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 原色日本海岸動物図鑑
保育社
内海冨士夫著 - 原色動物大図鑑Ⅳ
北隆館
岡田要、内田亨著 - 1)Acrocirridae Banse, 1968
(クマノアシツキ科 Banse, 1968)
Alejandro Martínez, Katrine Worsaae, Jorge Núñez
Handbook of Zoology. Annelida. Volume 1: Annelida Basal Groups and Pleistoannelida, Sedentaria I(2019)
DOI: 10.1515/9783110291582-007
▶ 見る - 2)南知多の自然No.257 珍種発見羽豆岬 クマノアシツキ
広報みなみちた 平成24年10月1日号
森田 博文
南知多町役場
▶ 見る - 3)南極海の氷の下から新種のクマノアシツキを発見
国立極地研究所 研究成果
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所
▶ 見る - 4)Still Digging: Advances and Perspectives in the Study of the Diversity of Several Sedentarian
Annelid Families
(掘り下げは続く:複数の定在性環形動物科の多様性研究における進展と展望)
Maël Grosse, Anna Zhadan, Joachim Langeneck, Dieter Fiege, Alejandro Martínez
Diversity(2021)
DOI:10.3390/d13030132
▶ 見る