柔軟なヒレを波打たせて泳ぐカワハギは、まるでドローンのように繊細に姿勢を制御して泳ぐことができます。 小さな口でも、ピンポイントで餌を口に入れ、味を確かめるように咀嚼すると、殻などを器用に吐き出します。
概要
和名:カワハギ
英名:Thread-sail Filefish
学名:Stephanolepis cirrhifer (Temminck & Schlegel, 1850)
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:通年
- 主な水深:10m前後
- 映像特徴:カワハギの泳ぎ、各部のUP、ジェット噴射で餌を探す様子
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 総ビットレート:60388kbps
- 長さ:6 分 44 秒
- サイズ:2.84GB
分類・分布
【分類】脊索動物門 > 条鰭綱 > フグ目 > カワハギ科 > カワハギ属 > カワハギ
【分布】青森県~九州までの日本各地沿岸、東シナ海、台湾、朝鮮半島、中国沿岸、フィリピン
特徴・雑学
カワハギは、左右に平たく側扁した体と、前方へ突き出た小さな口をもつ魚です。 体表は細かな棘を備えた丈夫な皮に覆われ、腹鰭は退化して突起状になっています。 頭上には太く鋭い第1背鰭棘があり、警戒時などには立てることで防御に利用します。 成熟した雄では、第2背鰭の軟条の一部が糸状に長く伸びます。
沿岸の浅い海に生息し、岩礁、砂底、海藻や海草の茂る場所などで見られます。 海底付近をゆっくりと泳ぎ、砂地では海底に海水を吹きかけて餌を探す行動が見られます。
グルメなおちょぼ口
カワハギは雑食性で、海底にすむゴカイ類や小型の甲殻類、貝類などのほか、クラゲや海藻類も食べます。 丈夫な歯で硬い殻や付着物をかじり取ることができ、砂地では口から海水を吹きかけて砂を飛ばし、その中に隠れている小さな生き物を探し出します。 餌を見つけると、前方へ突き出た小さな口で器用についばみます。
行儀よく、少しづつ食べる
視力の良い魚・でも鼻は…
カワハギは視覚情報を処理する視蓋がよく発達しておおり、視覚を利用して周囲や餌を認識しているとされています(1)。 実験では、線の太さや観察距離、暗いと認識力が落ちるなど、明るさによって視認限界が変化することも行動実験で確かめられています(2)。
カワハギは優位・劣位や興奮などの状態により、瞬時に体色パターンが変化する魚です。 実験では、優位個体と劣位個体で異なる体色パターンが確認され、興奮や恐怖によっても模様が変化し、その変化はわずか1~2秒で起こることが報告されています。 視覚情報を処理する「視蓋」がよく発達していることから、相手の体色や模様を視覚的に読み取り、個体間のコミュニケーションに利用している可能性も考えられます(3)。 実際に体色パターンを個体間のコミュニケーションとして捉えた研究もありますが、それぞれの模様を相手がどのような意味として認識しているのかまでは明らかになっていません。
一方、嗅覚器官の嗅板は比較的単純で、においを感じ取る表面積も小さいことから、嗅覚よりも視覚を重視して餌を探していると考えられているものの、 餌の探索において視覚と嗅覚のどちらを重視しているかは、十分に明らかになっていません。
縄張りが大切・カワハギの繁殖
カワハギの産卵行動は雌雄がペアになって砂の海底で行われ、卵は砂に付着します。 繁殖期のオスは縄張りを持ち、その中には1~4匹ほどのメスが暮らすします。 メスもそれぞれ小さな縄張りを持ち、互いに防衛します。 メスは1日に1回産卵しますが、オスは複数のメスと交尾する一夫多妻型です。 また、縄張りに定住するメスだけでなく、外から訪れるメスと交尾することもあります。 産卵後はメスが数分間卵を守りますが、その後は卵を残して離れ、約3日で孵化します(4)。
ケガによる欠損から再生する際のミスか?
食・利用
カワハギは、遅くとも江戸時代中期には食用魚として知られていました。 しかし、古くから格式ある高級魚だったわけではなく、沿岸地域で煮付けや汁物、干物などに利用されてきた身近な魚でした。
食通が求めたカワハギの肝
カワハギの肝がいつから食べられていたのかは明らかではありませんが、遅くとも昭和中期には、一部の食通の間でその味が評価されていました。 北大路魯山人が、魚の肝の中で特に美味なものの一つとしてカワハギを挙げています(5)。 さらに、1976年に杉浦明平の随筆集『カワハギの肝』(6)が刊行されたことも、その美味しさが広く知られる契機になったと考えられています。 その後、活魚輸送や冷蔵技術の発達によって鮮度のよい状態で流通するようになり、広く一般的に薄造りを濃厚な肝醤油で味わう食べ方が普及しました。 こうしてカワハギは、近年になって肝が特に珍重されるようになり、高級な美味魚として評価されています。完全養殖も達成・管理されるカワハギ
カワハギの養殖量はまだ限られていますが、西日本を中心に海面養殖が行われています。 人工飼育した親魚から次世代を生産する完全養殖にも成功しており、人工種苗を利用した養殖が可能になっています(7)。 ただし、流通するすべての養殖カワハギが完全養殖とは限りません。 養殖物は餌や水温を管理できるため、品質や肝の状態をそろえやすく、ほぼ通年出荷できることが利点です。 近年は陸上養殖も行われ、島根県出雲市では完全養殖由来の人工種苗を約1年間育てた「ぽちゃかわハギ」(8)が出荷されています。JR西日本イノベーションズ「ぽちゃかわハギ」
毒・危険性
人に対する毒性や危険性はありません。
何かを咥えて寝るという習性がある
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - Catalogue of Life(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- 1)Diversity of Brain Morphology in Teleosts: Brain and Ecological Niche
(真骨魚類における脳形態の多様性:脳と生態的ニッチ)
Hironobu Ito, Yuji Ishikawa, Masami Yoshimoto, Naoyuki Yamamoto
Brain, Behavior and Evolution, Vol. 69, No. 2, pp. 76–86(2007)
DOI: 10.1159/000095196
▶ 見る - 2)Visual Acuity of Fish - 1. Relationship Between Line Width and Distance at Visual Limit of
Filefish
Stephanolepis cirrhifer
(魚類の視覚に関する研究-I.カワハギの視認限界における線の太さと距離の関係)
An, Young-Il・Yang, Yong-Rhim
Journal of the Korean Society of Fisheries and Ocean Technology, Vol. 32, No. 3, pp. 241–248(1996)
DOI: なし(確認できず)
▶ 見る - 3)A Rapid Color Change in the Filefish
(カワハギおよびアミメハギの体色変化)
岡市友利・階 久雄・橋本芳郎
日本水産学会誌 Vol. 24, No. 6-7, pp. 389–393(1958)
DOI: 10.2331/suisan.24.389
▶ 見る - 4)Two alternative female tactics in the polygynous mating system of the threadsail filefish,
Stephanolepis cirrhifer (Monacanthidae)
(カワハギの一夫多妻型配偶システムにおけるメスの2つの代替繁殖戦術)
Hiroshi Kawase, Akinobu Nakazono
Ichthyological Research, Vol. 43, No. 3, pp. 315–323(1996)
DOI: 10.1007/BF02347603
▶ 見る - 5)知らずや肝の美味
(肝の知られざる美味しさ)
北大路魯山人
青空文庫・底本『魯山人味道』中央公論社(1938年)
DOI: なし
▶ 見る - 6)カワハギの肝
(カワハギの肝――食いもの談議)
杉浦明平
六興出版(1976年)
DOI: なし
▶ 見る - 7)カワハギの種苗生産技術開発
(カワハギの人工種苗生産および完全養殖技術)
平山仁斗・松浦光宏
宮崎県水産試験場・アグリサーチャー(2011年)
DOI: なし
▶ 見る - 8)ぽちゃかわハギ
(地下海水を利用した陸上養殖カワハギ)
JR西日本イノベーションズ
JR西日本「PROFISH」(2023年)
DOI: なし
▶ 見る