大きな雌の腹に小さな雄が顎を乗せるヒラメの求愛行動です。 背ビレを細かく震わせてアピールしているようにも見えます。
概要
和名:ヒラメ
英名:Japanese flounder,Olive flounder
学名:Paralichthys olivaceus (Temminck & Schlegel, 1846)
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:4月
- 主な水深:15m
- 映像特徴:ヒラメの求愛行動
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 総ビットレート:59802kbps
- 長さ:1 分 54 秒
- サイズ:825MB
分類・分布
【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > カレイ目 > ヒラメ科 > ヒラメ属 > ヒラメ
【分布】千島列島から九州、シナ海。
特徴・雑学
ヒラメは日本を代表する高級魚であり、1960年代には人工ふ化技術が確立されました。
現在では養殖や栽培漁業のための種苗生産が広く行われており、産卵や初期発生に関する研究も数多く進められています。
その一方で、自然下における求愛行動や産卵行動が観察される機会は多くありません。
メスの方が大きい・子孫を残す戦略
ヒラメは雌雄異体で、成長の途中で性転換することはありません。
一般的に雌の方が雄よりも成長が速く、大型になります。そのため繁殖期の観察では、雌の周囲に一回り小さな雄が集まる様子がしばしば見られます。
天然個体群を対象とした研究でも、雌は雄より速く成長し、より大きな体サイズに達することが報告されています(1)。
雌が大型になる理由は、多くの卵を生産するためと考えられています。
体が大きいほど卵巣を発達させることができ、より多くの卵を抱えることが可能になるためです(2)。
そのため繁殖期には、大型の雌を中心として複数の雄が集まり、求愛や産卵行動が行われます。
ボディータッチで求愛?・震わせる背鰭
ヒラメの求愛行動にはいくつかのパターンが知られています。
繁殖期には、雄が雌に寄り添いながら遊泳したり、体を接触させたりする行動が観察されます。
観察例の多くでは雌の方が雄よりも大きく、複数の雄が1尾の雌を取り囲むように集まることもあります。
場合によっては、雌の上に複数の雄が重なるように密集し、産卵の機会を競い合う様子も確認されています。
このような行動は、限られた繁殖機会の中で雄同士が競争しながら、雌との産卵を目指すヒラメの繁殖生態を示すものと考えられています。
水槽内で行われた観察では、複数の雄が海底から上昇して放精し、その後、雌が同じ場所へ上昇して放卵する様子が確認されています(3)。 雌は雄が放精した付近で卵を放出しており、こうした行動によって受精の確率を高めていると考えられています。
今回の映像では、大きな雌の腹部に小型の雄が顎を乗せるような行動が確認できます。
雄はしばしば背びれを小刻みに震わせており、産卵に向けた求愛行動の一場面である可能性があります。
なお、ヒラメの求愛行動は海中で観察される機会が少なく、その詳細には未解明な部分も残されています。
食・利用
ヒラメは日本を代表する高級魚のひとつで、古くから刺身や寿司種として親しまれてきました。 江戸時代の料理書『古今料理集』では、マダイを筆頭に、ヒラメやスズキが上魚として扱われており、現在では高級魚とされるマグロやブリは下魚に分類されています(4)。 魚の評価は時代とともに変化してきましたが、ヒラメは昔も今も高級魚として高く評価され続けています。
ヒラメは昔から「上等な魚」
ヒラメは日本を代表する白身魚のひとつで、現在では刺身や寿司種として広く利用されています。
特に活魚流通や冷蔵技術が発達した現代では、ヒラメ本来の食感や風味を生かした刺身や薄造りが人気です。
背びれ・尻びれの付け根にある「縁側」も、独特の食感を持つ部位として親しまれています。
また、ヒラメは昆布締めとして利用されることもあります。 昆布締めは魚を昆布で挟み、保存性を高めるとともに、昆布の旨味を移す調理法です。 冷蔵技術が普及する以前から行われてきた方法で、特に北陸地方では昆布を利用した食文化が発達しており、ヒラメを含む白身魚の昆布締めが親しまれています。
このほか、煮付け、唐揚げ、ムニエルなどにも利用されます。 刺身や薄造りに使用した後の頭や中骨は、潮汁や味噌汁などに利用されることもあります。 現在では天然魚と養殖魚の両方が流通しており、日本各地で様々な料理に利用されています。
毒・危険性
人に対する毒性や危険性はありません。
養殖や地方名なども紹介
飛び上がる前に体を波打たせている
遠くから泳いで来て捕食している
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- 1)Age validation and growth variability of Japanese flounder Paralichthys olivaceus off the Pacific coast of
northern Japan
(北日本太平洋沿岸におけるヒラメの年齢検証と成長変異)
Michio Yoneda, Yutaka Kurita, Daiji Kitagawa, Masaki Ito, Toshihiro Tomiyama, Tohru Goto, Kiyoshi Takahashi
Fisheries Science 73(3):585–592(2007)
DOI:10.1111/j.1444-2906.2007.01371.x
▶ 見る - 2)Fish reproductive-energy output increases disproportionately with body size
(魚類の繁殖エネルギー出力は体サイズとともに不均衡に増加する)
Diego R. Barneche et al.
Science(2018)
DOI:10.1126/science.aao6868
▶ 見る - 3)ヒラメの繁殖行動
公益財団法人 海洋生物環境研究所
デジタルアクアリウム 魚の生態 No.3(2002)
▶ 見る - 4)天下タイ平―魚と人の江戸時代―第3章 食べタイ
「本の万華鏡」第30回
国立国会図書館
▶ 見る