概要
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長さ:PT6M46S
サイズ:1.89GB
分類・分布
脊椎動物亜門 > 軟骨魚綱 > シビレエイ目 > シビレエイ科 > シビレエイ属 > シビレエイ
南日本、南シナ海
特徴・雑学
シビレエイは、浅い海の砂泥底に生息するエイの一種です。
普段は体に砂をかぶるように身を潜め、外からは噴水孔だけが見える状態となるため、非常に気づきにくい存在です。
卵胎生で、5月頃に仔魚を出産します。
産仔数は数尾から十数尾ほどとされ、産まれてくる仔魚はすでに小さなエイの姿をしており、体長はおよそ8~10cmです(1)。
【粘膜に覆われた体】
体表は糖タンパク質のムチンを主成分とする粘液に覆われており、砂から出てもなお、うっすらと砂が付着した状態が保たれます。
これにより周囲の環境と一体化し、カモフラージュとして機能します。
この粘液には、外部からの刺激をやわらげる緩衝的な役割や、細菌の侵入を防ぐ抗菌作用があると考えられています(2)。
シビレエイを覆う粘膜に砂が付く様子。目と噴水孔
▲ 粘膜に砂が付いている様子
▲ 飛び出した目と噴水孔
【瞬間的な発電】
シビレエイは電気を発生させることができる魚です。
体内には電気を生み出すための特別な細胞(電気細胞/Electrocyte)と、それが集まった電気器官が備わっています。
電池のように蓄えたものを放出するのではなく、神経の指令によって瞬間的に発生する強い電気(パルス)です(3.4)。
発生する電圧は種や個体の状態、測定条件によって異なり、一般に20〜50ボルト程度とされますが、100ボルトを超える場合もあると報告されています。
人が受ける感覚は、静電気のように瞬間的な「バチッ」とした刺激で、瞬間的なのはパルスであるためです。
この発電はシビレエイ自身によって厳密に制御されており、砂中の甲殻類などの獲物を捕らえる際や、外敵から身を守るために意識して用いられます。
そのため、人が触れたからといって必ずしも放電するとは限りません。
シビレエイは生まれた直後から電気を発することができますが、発電細胞が少ないためその出力は成体に比べて弱く、成長とともに強くなっていきます(5)。
【古代ローマの電気治療】
電気という概念がまだ存在しなかった古代において、シビレエイが生み出す発電現象はきわめて奇異なものと捉えられていました。
病気が悪魔や神の仕業と考えられていた時代にあってなお、その不思議な力に可能性を見いだし、「医療」として活用しようと試みていた記録があります。
紀元1世紀、ローマ皇帝クラウディウスの侍医であったスクリボニウス・ラルグス(Scribonius Largus)は、 著書『Compositiones medicamentorum(薬剤調合法/処方集)』の中で、シビレエイが痛風の治療に効果があることを記述しています。
スクリボニウス・ラルグス『Compositiones medicamentorum(薬剤調合法/処方集)』
原本は紀元1世紀に書かれたものであり、現存していません。
現在残っているのは、人々の手によって書写された写本であり、最古のものはパリ国立図書館に収蔵されている9世紀の写本とされています。
バチカン図書館所蔵の写本①は、15世紀に書写されたもので、複数の文献をまとめたものとされています。
古いラテン語で記されているため内容はまったく判読できず、掲載した写本画像はCLXIIの該当箇所ではありません。
一方、19世紀に刊行されたHelmreich校訂版②はラテン語による印刷本であり、シビレエイに関する第162項(CLXII)の記述を確認することができます。
▲ バチカン図書館所蔵①
(Vat. lat. 4414)
▲ Helmreich 校訂版②
(Teubner, 1887年)
出典:①バチカン図書館(Biblioteca Apostolica Vaticana)デジタルアーカイブ「DigiVatLib」より、写本番号 Vat. lat. 4414 の詳細画面(6) ,②インターネット・アーカイブ(非営利デジタル図書館)所蔵 デジタルスキャン公開資料(7)
「Compositiones medicamentorum(CLXII)」
[ラテン語原文]
Ad utramlibet podagram torpedinem nigram vivam, cum accesserit dolor, subicere pedibus oportet stantibus in litore non sicco, sed quod alluit mare, donec sentiat torpere pedem totum et tibiam usque ad genua. Hoc et in praesenti tollit dolorem et in futurum remediat. Hoc Anteros Tiberii Caesaris libertus supra hereditates remediatus est.[訳]
「いかなる痛風に対しても、痛みが生じたときには、生きた黒いシビレエイを患者の足の下に置くべきである。 場所は乾いた地面ではなく、海水に洗われる海岸に立たせ、その足全体と、すねが膝に至るまでしびれるのを感じるまで続ける。 この方法は、その場の痛みを取り除くだけでなく、将来的にも治療効果をもたらす。 ティベリウス帝の解放奴隷アントロスも、この方法によって治癒したとされている。」参考(8)
【発電システムの利用】
シビレエイの電気器官は、神経による制御を受けなくても、神経伝達物質によって人工的に刺激することで発電させることができます。
この性質を利用し、シビレエイの発電原理を応用したり(9)、生体の電気器官をそのまま発電装置として利用する研究も行われています(10)。
食・利用
見た目からも柔らかそうですが、水っぽい肉質の為に食用にすることは無いようです。
毒・危険性
シビレエイの電気刺激は、人が死に至るような直接的危険性はありません。
毒の棘はありません。
サメと名が付くがエイの仲間
腹部が動いているのが見える
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- 1)シビレエイ
Web図鑑 黒潮の生き物たち
公益財団法人 黒潮生物研究所
▶ 見る - 2)魚のヌルヌルの正体とは?役割や理由を解説
さかなの会 メディア
一般社団法人 さかなの会
▶ 見る - 3)日本産しびれえい(Narke japonica)の放電について
杉靖三郎,田中英彦,深山幹夫
生体の科学(1954)
DOI:10.11477/mf.2425905659
▶ 見る - 4)The Electrophysiology of Electric Organs of Marine Electric Fishes: I. Properties of electroplaques of Torpedo nobiliana
(海産電気魚の電気器官の電気生理:I. シビレエイ電板の性質)
M.V.L.Bennett, M.Wurzel, H.Grundfest
Journal of General Physiology(1961)
DOI:10.1085/jgp.44.4.757
▶ 見る - 5)日本産しびれえいの胎児の放電について
深山幹夫
千葉大学文理学部紀要(1959)
DOI:なし
▶ 見る - 6)スクリボニウス・ラルグス『Compositiones medicamentorum』写本(Vat. lat. 4414)
DigiVatLib(バチカン図書館デジタルアーカイブ)
Biblioteca Apostolica Vaticana(バチカン図書館)
▶ 見る - 7)スクリボニウス・ラルグス『Compositiones medicamentorum』デジタル公開資料
Internet Archive(インターネット・アーカイブ)
Internet Archive(非営利デジタル図書館)
▶ 見る - 8)Scribonius Largus' Compounding of Drugs (Compositiones medicamentorum): introduction, translation, and medico-historical comments(PDF)
(スクリボニウス・ラルグス『薬剤調合法(処方集)』:序論・翻訳および医学史的考察)
Ianto Thorvald Jocks
University of Glasgow PhD thesis P107(2020)
DOI:なし
▶ 見る - 9)Powering Electronic Devices from Salt Gradients in AA Battery-Sized Stacks of Hydrogel-Infused Paper
(ハイドロゲル含浸紙を積層した単三電池サイズ構造における塩濃度勾配を利用した電子機器への電力供給)
Anirvan Guha, Michael D. Dickey ほか
Advanced Materials(2021)
DOI:10.1002/adma.202101757
▶ 見る - 10)An electric generator using living Torpedo electric organs controlled by fluid pressure-based alternative nervous systems
(流体圧を用いた代替神経系により制御されたシビレエイ電気器官による発電装置)19V-8A
Tomohiro Yamada, Takashi Kawano, Kenta Ishida ほか
Scientific Reports(2016)
DOI:10.1038/srep25899
▶ 見る