サムクラゲ

クラゲを食べる目玉焼き

Phacellophora camtschatica

Blogger 撮影コラム:「白くたなびく毒の糸・サムクラゲ」

概要

和名:サムクラゲ

英名:Fried egg jellyfish / Egg-yolk jellyfish

学名:Phacellophora camtschatica Brandt, 1835

撮影地:静岡県沼津市 3月

提供映像(サンプル映像は1280x720.30pです)

分類・分布

刺胞動物門 > 鉢虫綱 > 旗口クラゲ目 > サムクラゲ科 > サムクラゲ属 > サムクラゲ

オホーツク海、北部太平洋、北極海。基本的には寒冷域のクラゲですが、冬季に相模湾や駿河湾で記録されることがあります。

特徴・雑学

ユウレイクラゲに似ていますが、傘の縁は深く切れ込まず、触手が傘縁に沿って並ぶのが特徴です。 大きなもので傘の直径は60センチほどに達する大型種で、90cm(3フィート)という記述もあります。 映像の個体は傘の直径が50センチほどですが、触手は非常に伸縮自在で、長く伸びた際には4メートルほど、拍動して遊泳する際は20cm~60cmほどでした。 傘の中央の生殖器官が黄味を帯びると、その周囲が白っぽいことから目玉焼きのように見えるため、英語では Fried egg jellyfish、通称「目玉焼きクラゲ」とも呼ばれます。(1)

 

【クラゲの好き嫌い】
サムクラゲはクラゲ類を捕食することで知られており、クラゲのほかにもオタマボヤ類のハウスなど、浮遊性のゼラチン質プランクトンをとらえます。 同様にプランクトンを食べるアマクサクラゲの飼育下では、ミズクラゲを捕らえて食べる一方で共食いはしないことが観察されています。(2)
近年の研究では、クラゲの触手には水中の化学物質を敏感に捉える化学受容器があり、餌に由来する特定の摂食刺激物質(ファゴスティミュラント:phagostimulant)が捕食行動を誘発することがわかってきました。 また、クラゲの刺胞は触れる刺激だけで発射されるのではなく、化学刺激と触覚刺激が組み合わさったときに反応する仕組みがあるとされています。 さらに、クラゲの神経系は単なる反射だけではなく、空腹状態に応じて行動を変化させることも示されており、ある意味では「今、これを食べるべきか」を判断しているとも考えられています。 ただし、なぜ特定の種類のクラゲを餌として多く捕らえるのかについては、まだ十分に解明されていません。(3)(4)

 

【クラゲに隠れる魚達】
映像では、口腕の周囲にハナビラウオの幼魚などが寄り添っている様子が見られます。 クラゲには甲殻類の他、ハナビラウオやクラゲウオ、カイワリ、イボダイなどの魚類の幼魚が、身を隠すようにして暮らします。 捕食者は刺胞の毒を嫌って近づきにくいため、クラゲは幼魚たちにとって天然の砦のような存在になります。 一方で、隠れる側の魚たちは、刺胞が触れても反応しにくい皮膚粘膜や毒への耐性を持つと考えられており、クラゲの中でも比較的刺胞の少ない部位を選びながら生活しているとされています。(5)

 

【クラゲと漁業】
瀬戸内海では、傘のような網にちぎったクラゲを餌として仕掛け、カワハギやウマヅラハギなどが食べに来たところを勢いよく引き上げて捕らえる「ハゲヒキ(はぎすくい漁)」という漁法が行われていました。 古くから、ハギ類がクラゲを食べることは知られており、魚の習性を利用した伝統的な漁法です。(6) また、クラゲが多い年には、そこに隠れて暮らす魚類も増えると言われています。 実際に、クラゲの数と、幼魚期をクラゲとともに過ごすイボダイの数を比較した研究もあり、クラゲが多い年ほどイボダイも増えることが確認されています。(7)

クラゲを食べるカワハギ

食・利用

食用として利用されるクラゲではありません。

毒・危険性

触手には刺胞があり、素肌に触れると皮膚に刺激や痛みを生じることがあります。
サムクラゲは強い毒で知られる種ではありませんが、よく似たユウレイクラゲはより強い毒を持つといわれています。 海中では種を正確に判別することが難しいため、クラゲ類にはむやみに触れないという基本を守ることが安心です。
細く長い触手は水中で広く広がるため、本体の周囲にも注意が必要です。

イボクラゲとハナビラウオ

不老不死にはスイッチがある?「ベニクラゲモドキ」

参考資料

トップページへ戻る
お問い合わせはこちら