ナヌカザメの瞬褶

目を閉じる魚

Cephaloscyllium umbratile

水深20mほどの、岩場の急斜面で休んでいたナヌカザメです。 驚かせないように照明を点けずに撮影していますが、迷彩模様が周りの岩の風景に溶け込むようです。
完全に眼を閉じてはいませんが、閉じ気味のようにも思えます。 この状態から動きはありませんでした。

🔬 専門資料・出典引用(11件)

ウインクされたい!

ダイビングで出会うことのあるサメのうち、ナヌカザメやドチザメは眼を閉じるサメです。
大人しいサメなので、泳いでいるところに出会うというよりは、海底でじっとしている場面に出会います。
「今度こそ、目を閉じる瞬間が見られるか?!」と、寝ている?サメの瞳をじっと見つめますが、30秒、1分、2分・・・ 残念ながら閉じたシーンは見たことがありません。
まったく動きのないサメの瞳を見つめるのは、たとえ1分でも長いですね。

概要

和名:ナヌカザメ

英名:Blotchy swellshark

学名:Cephaloscyllium umbratile Jordan & Fowler, 1903

  • 撮影場所:静岡県伊東市
  • 撮影時期:4月
  • 主な水深:15m
  • 映像特徴:眠そうに見えるナヌカザメの目。瞬褶

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

  • コーデック:H264-MPEG4AVC
  • 解像度:1920x1080
  • フレームレート:59.94
  • 長さ:22秒
  • サイズ:110MB

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 軟骨魚綱 > メジロザメ目 > トラザメ科 > ナヌカザメ属 > ナヌカザメ

【分布】北海道以南、東シナ海、台湾

特徴・雑学

鋭く泳ぎ回る大型のサメとは印象が異なり、海底近くでじっとしていることが多い“底生性”のサメです。 最大でも1m前後ほどで、体には迷彩服のような褐色のまだら模様があります。
陸に上げても“七日間生きる”ほど生命力が強いとされ、「七日鮫」が由来ともいわれています。

目を閉じて寝る?瞼を持つナヌカザメ

魚類の多くは、人間のように上下に動く“まぶた”を持っていません。 一方、サメ類では眼を保護する構造が発達しており、種類によって「瞬膜」や「瞬褶(しゅんしゅう/secondary lower eyelid)」という、瞼に近い構造が見られます(1)。 ナヌカザメを含む一部のサメは、眼の下側の皮膚が持ち上がる「瞬褶」があり、時折、人間のまぶたのように眼を閉じることができます(2)。 目を閉じるのは、眼球が傷つきそうな場面で保護するためであり、人間のように寝る時に閉じたり、頻繁に瞬きすることは無く、瞼を閉じる瞬間を見るのは非常に稀です。 映像のナヌカザメの目は、眠そうな目に見えますが、ドチザメでは寝ていても目を閉じませんので、寝ることとは関係ないようです。

目を閉じることのできる「瞬褶」を持つドチザメ ナヌカザメと同じように、目を閉じるための「瞬褶」という器官があるドチザメの水中映像。寝ていても目を閉じるわけではなく、危険を感じた時にだけ閉じる保護器官だ。

寝ていても目は閉じていない

危険を感じると膨らむ ナヌカザメの防衛能力

ナヌカザメは、危険を感じると海水や空気を大量に飲み込み、体を大きく膨らませるという、非常に変わった防御行動を行います。 膨らんだ体は普段の細長い姿とは別物のようになり、岩の隙間や穴の中で身体を固定することで、外敵に引きずり出されにくくなると考えられています。 この行動は、ただ大きく見せて威嚇するだけではなく、「抜けなくなる」こと自体が重要な防御になっている点が特徴です。 海外では近縁種が “Swell Shark(膨らむサメ)” と呼ばれることもあり、膨張行動を行うサメの仲間として知られています(3)。

人魚の財布 不思議な漂流物はサメの卵

雌は細長い袋状の卵を産卵します。 卵殻は非常に丈夫な角質でできており、四隅から糸状の突起が伸び、周囲に絡みついて固定されるようになっています。 ダイビングでは、水深20m~30mに生息するソフトコーラルの仲間のヤギ類に産み付けられている様子を見かけます。

水温などの条件にもよりますが、孵化までに1年ほどかかります。 10cm~15cmほどの卵殻の上部は、広げると開く、スリットのような隙間があり、完全に密封されてはいません。 20cmほどの小さなサメの姿になった仔サメは、スリットを押し広げるようにして外へと出ます(4)。

こうしたサメやエイの卵殻は、海外では “Mermaid’s purse(人魚の財布)” と呼ばれています。 海岸に打ち上がることも多く、黒っぽい革の袋のような見た目から、昔の人々が不思議な生き物の持ち物のように感じたことが名前の由来とされています。

ナヌカザメの地方名

  • とら:銚子
  • ねこ:銚子
  • ねこぶか:紀州

食・利用

ナヌカザメは皮のゼラチン質が多く、独特の舌触りが特色で、やや淡泊な肉質はアンモニア臭が少ないとされます。
長崎県周辺では「ヤモリ」と呼ばれ、古くから食用として利用されてきました。 特に長崎の伝統的な宴会料理である「卓袱料理(しっぽくりょうり)」では、湯引きしたサメ料理の材料として扱われ、市場価値が高いとされます(5)。

毒・危険性

ナヌカザメに毒性はありません。

エイのようなカスザメはサメだという証拠 サメと名前に付くエイもいますが、エイのようなのにサメという魚もいます。平らな形のカスザメは、エイのようですが「鰓が体の横にある」でのサメです。普段は見られない生きているカスザメの鰓の希少映像です。

普通は見ることはできない

サザエを食べてしまうので嫌われる「ネコザメ」 小さい個体は「子猫」と呼ばれてダイバーに人気のネコザメっだが、成長するとサザエを食べる嫌われ者になる。鋭い歯ではないが、強力な顎の力でサザエを噛み砕く。

硬い巻貝も砕く顎を持つ

参考資料

  • 日本産魚類全種リスト(分類情報)
    ▶ 見る
  • JAMSTEC BISMaL(分類情報)
    ▶ 見る
  • World Register of Marine Species(分類情報)
    ▶ 見る
  • 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
  • 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
  • 方言にちなんだ日本の魚・高木正人・自費出版
  • 1)SHARKS
      FAO Species Identification Guide for Fishery Purposes
      Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)
    ▶ 見る
  • 2)まぶたを閉じて
      男鹿水族館GAO「GAOっと!ぶろぐ」
      男鹿水族館GAO
    ▶ 見る
  • 3)Swell Shark
    Mexican Fish.com
    ▶ 見る
  • 4)ナヌカザメの赤ちゃん誕生!
      沖縄美ら海水族館 美ら海だより
      沖縄美ら海水族館
    ▶ 見る
  • 5)グラバー図譜 ナヌカザメ
      長崎大学広報誌 Choho 45号(2013)
      長崎大学
    ▶ 見る