夜行性のイットウダイは、昼間は岩陰で過ごします。 紅白の体は目立つためではなく「分断色」という輪郭をごまかす色彩だと考えられています。
概要
和名:イットウダイ
英名:North Pacific squirrelfish
学名:Sargocentron spinosissimum (Temminck and Schlegel, 1844)
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:10月、11月
- 主な水深:12m
- 映像特徴:岩陰に潜むイットウダイ
提供映像(サンプル映像はYouTube版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 長さ:------
- サイズ:------
分類・分布
【分類】脊索動物門 > 条鰭綱 > キンメダイ目 > イットウダイ科 > イットウダイ属 > イットウダイ
【分布】本州中部以南、台湾
特徴・雑学
イットウダイは、赤い体に細い白色の縦縞が並ぶイットウダイ科の魚で、大きな眼と硬い鱗を持ちます。 テリエビスと酷似していますが、テリエビスの背ビレに見られる黒い斑紋と白色のラインが、イットウダイにはありません。 また、テリエビスの胸ビレの付け根の内側にある黒い斑点も、イットウダイには見られません。
やはり鰓蓋の棘には毒がある
硬い鎧と毒の槍
イットウダイの体は、大きく硬い鱗によって鎧のように覆われています。
鰓蓋付近には、左右それぞれの主鰓蓋骨の後方に2本、前鰓蓋骨の下縁に1本の鋭い棘があります。
このうち、イットウダイ亜科の特徴である前鰓蓋の棘には毒腺があり、刺すことで毒を注入し、捕食者から身を守るための構造と考えられています(1)。
毒性はそれほど強くないとされますが、刺されると痛みが長く続くことがあります。釣り上げた際や調理する際には、硬い鱗だけでなく、鰓蓋付近の棘にも注意が必要です(2)。
イットウダイ亜科のアヤメエビスの棘
▲ 前鰓蓋の下の縁にある
海中では目立たない「赤」
イットウダイは夜行性の魚です。 昼間は大きな岩の下や隙間の奥に隠れており、出てくることはありません。 海中では水深が増すにつれて赤い光が吸収されるため、赤色は本来の鮮やかさを失い、暗い色に見えるようになります(3)。 岩の下などの暗がりで見ると、輝くような赤い色には見えません。
縞模様による防御
赤と白などの、明暗差のある縞模様は「分断色(Disruptive Coloration)」と呼ばれ、体の輪郭を分かりにくくする効果があるとされます(4)(5)(6)(7)。 イットウダイの縞模様も、光と影が複雑に重なる岩礁域では、体の形をひとつながりの魚として認識しにくくする可能性があります。 捕食者が獲物の位置や輪郭を見極めるまでの時間を少しでも遅らせることができれば、その間に岩の隙間へ逃げ込む機会を得られます。
食・利用
イットウダイは食用になる魚で、釣りのほか、定置網や刺し網などで漁獲されます。 しかし、体が小さく漁獲量も安定しないため、一般の鮮魚店にまとまって並ぶことはほとんどありません。
身は白身で、汁物や煮付け、揚げ物などに利用できますが、硬い鱗に覆われ、鰓蓋付近には鋭い棘があるため、下処理には手間がかかります。 市場価値の高い魚ではありませんが、漁獲された地域で食べられることのある、小型の食用魚です。
毒・危険性
イットウダイ亜科の特徴である前鰓蓋の下縁にある大きな棘は、刺すことで毒を注入する棘です(8)。
カサゴ類よりも弱い毒であろうとされますが、釣り上げた際や調理の際に刺されないよう注意が必要です。
食用による毒性はありません。
前鰓蓋の下にある大きな棘には毒があるので注意
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - Catalogue of Life(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- 1)Sargocentron rubrum (Forsskål, 1775)
(アヤメエビス)
Rainer Froese and Daniel Pauly(編)
FishBase
DOI: なし
▶ 見る - 2)ホシエビス Sargocentron punctatissimum
高知大学理学部海洋生物学研究室
高知大学「今月の魚」(2003年8月)
DOI: なし
▶ 見る - 3)Cryptic and conspicuous coloration in the pelagic environment
(外洋環境における隠蔽色と目立つ体色)
Sönke Johnsen
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(2002年)
DOI: 10.1098/rspb.2001.1855
▶ 見る - 4)Disruptive coloration and background pattern matching
(攪乱色彩と背景模様への一致)
Innes C. Cuthill, Martin Stevens, Jenna Sheppard, Tracey Maddocks, C. Alejandro Párraga, Tom S. Troscianko
Nature 434, 72–74(2005年)
DOI: 10.1038/nature03312
▶ 見る - 5)Disruptive colouration in reef fish: does matching the background reduce predation risk?
(サンゴ礁魚類の分断色:背景との一致は捕食リスクを低減するのか?)
Genevieve A. C. Phillips, Martin J. How, Julia E. Lange, N. Justin Marshall, Karen L. Cheney
Journal of Experimental Biology 220, 1962–1974(2017年)
DOI: 10.1242/jeb.151480
▶ 見る - 6)Disruptive coloration and behavior facilitate camouflage of blue-spotted cornetfish against
complex coral
reef bottoms
(分断色と行動が、複雑なサンゴ礁底におけるアオヤガラのカモフラージュを促進する)
María Alejandra Castillo, Jose Tavera
Marine Ecology 43, e12731(2022年)
DOI: 10.1111/maec.12731
▶ 見る - 7)Water column use by reef fishes of different color patterns
(体色パターンの異なるサンゴ礁魚類における水柱利用)
Luísa E. F. dos Anjos, Felipe M. Gawryszewski, Eduardo Bessa
Neotropical Ichthyology 20, e210101(2022年)
DOI: 10.1590/1982-0224-2021-0101
▶ 見る - 8)ホシエビス Sargocentron punctatissimum
高知大学理学部海洋生物学研究室
高知大学「今月の魚」(2003年8月)
DOI: なし
▶ 見る