アヤメエビス

模様の戦略

Sargocentron rubrum

岩陰に隠れ棲むアヤメエビスは、人間から見るとド派手な模様ですが、実はこれがカムフラージュになるそうです。 赤い色合いも、海の中では黒っぽく見え、自然環境下ではそれほど派手ではありません。

🔬 専門資料・出典引用(12件)

概要

撮影地: 静岡県沼津市 水深12メートル

和名:アヤメエビス

英名:Redcoat squirrelfish

学名:Sargocentron rubrum (Forsskål, 1775)

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > キンメダイ目 > イットウダイ科 > イットウダイ属 > アヤメエビス

【分布】本州中部以南、西・中部太平洋、インド洋、紅海、地中海

特徴・雑学

アヤメエビスは、紅白の縞模様が特徴的なイットウダイ科の中でもひときわ鮮やかで、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレにも縞模様があります。 鰓蓋の主鰓蓋骨には後方へ伸びる2本の棘があり、前鰓蓋骨の下の縁には大きな棘が1本あります。 このうち、前鰓蓋の棘には毒腺があり、刺されるとひどく痛むとされます(7)(8)。
映像では、鰓蓋をわずかに開きながら体を捻るような行動が見られました。捕食されそうになった際に同様の動きをすれば、棘が捕食者の口内に刺さり、捕食を断念させる効果があるのではないかと考えられます。

水中では紅白ではない

紅白の縞模様はとても目立つように思えますが、太陽光が降り注ぐ陸上とは異なり、海中では赤い光が水深とともに減衰するため、赤色は次第に暗く見えるようになります(1)。 白い部分も、自然光の乏しい水中で鮮やかに輝いて見えるわけではありません。
映像のアヤメエビスが鮮やかな紅白に見えるのは、照明を当てているためです。 夜行性のアヤメエビスは、昼間は大きな岩の下などの暗がりで過ごすため、自然の海中で鮮やかな「紅白の魚」として見える機会は少ないでしょう。

縞模様の防御

コントラストのはっきりした模様は「分断色(Disruptive Coloration)」と呼ばれ、体の輪郭をわかりにくくする効果があると考えられています(2)(3)(4)(5)。 捕食者が獲物の姿を認識するまでの時間をわずかでも遅らせることで、逃げる機会を得られます。 分断色を持つ魚は、岩陰や海底付近など、光と影が入り交じる環境で多く見られます。

夜に縞模様になるアオヤガラ 夜になると縞模様が現れるアオヤガラの水中映像

縞模様は分断色であると考えられる

食・利用

アヤメエビスは食用になりますが、漁獲量が少なく、一般の鮮魚店に並ぶことはほとんどありません。 身は脂の甘味をもつ白身で、刺身や塩焼き、煮付け、唐揚げなどに利用できます。特に塩焼きでは、硬い鱗を残したまま焼くことで、身を蒸し焼きのように仕上げる方法もあります(6)。

味のよい魚ですが、鎧のように硬い鱗や鋭い棘があり、下処理には手間がかかります。 食用魚として広く流通しないのは、味が劣るためではなく、漁獲量の少なさと扱いにくさによるところが大きいようです。

毒・危険性

イットウダイ亜科の特徴である前鰓蓋の下縁にある大きな棘は、刺すことで毒を注入する棘です(7)(8)。 カサゴ類よりも弱い毒であろうとされますが、釣り上げた際や調理の際に刺されないよう注意が必要です。
食用による毒性はありません。

イットウダイ科のイットウダイ 赤が鮮烈なイットウダイの水中映像

やはり鰓蓋の棘には毒がある

イットウダイに似るテリエビス イットウダイとそっくりなテリエビス

やはり鰓蓋の棘には毒がある

参考資料

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