概要
和名:イシガキダイ
英名:Spotted knifejaw
学名:Oplegnathus punctatus (Temminck & Schlegel, 1844)
撮影地:静岡県伊東市
提供映像(サンプル映像は1280x720/30pです)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94fps
- 長さ:8分27秒
- サイズ:2.4GB
分類・分布
脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > イシダイ科 > イシダイ属 > イシガキダイ
本州中部以南、朝鮮半島、中国
特徴・雑学
イシガキダイは、体の模様が石垣状の斑紋であることから和名がつけられました。
若魚の石垣模様は密で黒っぽく、成長すると斑紋に間隔があくようになり、銀色がかった体色へと変化します。生息場所の環境などの違いで、パターンや濃淡には違いが出るようです(*1)。
老成魚は体の石垣模様が不明瞭になり口元が白くなるため「クチジロ」と呼ばれます。
【秋に群れと産卵行動】
通常は単独、あるいは数尾で行動し、岩穴などに身を潜めて生活しますが、東伊豆では秋になると、沖合に面した岩礁斜面に沿って泳ぐ群れが見られます。
群れが形成され始めた当初は10尾ほどの小規模なものですが、次第に数が増え、100尾を超える玉状の群れとなることもあります。
イシガキダイの成熟は比較的遅く、成熟年齢はおよそ5〜6歳と考えられています。
産卵行動には地域差がありますが、鹿児島では水温17〜19℃の4月頃に始まり、6月には水温22〜25℃に達するまで観察されたと報告されています。
また別の研究では、体重2〜4kg(7〜12歳)で、おおよそ全長40cm以上に相当する個体での自然産卵が多数確認されたとされています(*2)。
伊豆半島において、黒潮大蛇行以前の年間最高水温は9月下旬の25〜26℃ですが、本映像が撮影された観察時期は、それ以降の10〜11月(2011年、2017年)でした。
また、目視でのおおよそではありますが、映像の個体は、大きくても全長30cm程度です。
イシガキダイの自然状態における産卵行動の観察例は少なく、秋季に見られる群れ形成と産卵行動との関連については、現時点では明らかになっていません。
【食生活】
歯は癒合して鳥類の様なクチバシ状をしています。ハタのように大きく口を開けて獲物を飲み込む構造にはなっておらず、強力な顎の力で硬いウニや貝殻を噛み砕くことができます。
肉食傾向が強いものの、消化器官には藻類も分解できる酵素を持っており、雑食性の魚です(*3)。
参考動画:イシガキダイの成長
食・利用
イシガキダイは高級魚として流通しています。食味は良く、刺身や焼き物などに利用されます。
暖かい海に棲息する大型個体にはシガテラ毒(Ciguatoxin)が蓄積する場合があり、地域やサイズによっては食用を避けることが勧められています(*4)。
毒・危険性
熱帯・亜熱帯域では、シガテラ毒(Ciguatoxin)を産出する渦鞭毛藻を摂餌することによるシガテラの蓄積、または食物連鎖による蓄積がみられます(*5)。
暖かい海い棲息する大型のイシガキダイにはシガテラ毒が蓄積している場合があり、地域やサイズによっては食用を避けることが勧められています。
シガテラ毒による症状は、徐脈、血圧低下などの循環器系症状。下痢、嘔吐、腹痛、吐き気などの消化器系症状。
手足のしびれ、冷温感覚の逆転、頭痛、めまい、倦怠感などの神経症状があります。
中でも、冷たいものに触れた時に激しい刺激を感じる「ドライアイスセンセーション」と呼ばれる感覚異常が特有です。
発症は数時間から数日後で、数週間から、長い場合は数か月間続く場合もあります。2008年から2024年までの間で、シガテラ毒による日本国内の死亡例はありません。
シガテラ毒(Ciguatoxin)は、加熱や冷凍をしても無毒化されません。
参考動画:イシガキダイとイシダイの自然交雑種
参考資料
▶ 見る
道津喜衛・夏苅豊
長崎大学水産学部研究報告 第24号(1967)
▶ 読む
川辺勝俊・木村ジョンソン
水産増殖(Aquaculture Science)55(1), 135-136(2007)
▶ 読む
(肉食性魚類イシガキダイに見られる高いβ-グルコシダーゼ活性の由来と発現機構の解明)
International Journal of Biological Macromolecules, Vol. 273(2024)
Yanduo Wu、Yongshuang Xiao、Zhizhong Xiao、Wensheng Li、Jun Li
▶ 読む
▶ 見る
小池一彦 みどりいし 第5巻 P19-22(1994) ▶ 見る