ツノクラゲ

摂餌のトランスフォーム

Leucothea japonica

概要

和名:ツノクラゲ

英名:Leucothea comb jelly

学名:Leucothea japonica Komai, 1918

撮影地:静岡県伊東市、沼津市

提供映像(サンプル映像は1280x720.30pです)

分類・分布

有櫛動物門 > 有触手綱 > カブトクラゲ目 > ツノクラゲ科 > ツノクラゲ属 > ツノクラゲ

ツノクラゲは、日本近海を含む西部北太平洋の暖流域に分布する外洋性の有櫛動物です。 原記載は三崎(相模湾)周辺で行われており、その後は相模湾や駿河湾、伊豆半島沖など本州太平洋岸の黒潮域に加え、 フィリピン周辺など亜熱帯域からの記録もあります。通常は沖合の中層〜表層を漂う浮遊生活者ですが、 海況によっては沿岸表層まで運ばれるため、一般的なダイビングでも観察されます。

特徴・雑学

ツノクラゲの体は透明な楕円形をしており、刺激を受けると伸縮する突起が表面に多数あります。 細く長い2本の一次触手をアンテナのようにたなびかせながら泳ぐ姿が特徴です。
体側には8列の櫛板が並び、光の当たり方によって虹色に輝いて見えますが、これは発光ではなく繊毛への光の反射によるものです。
非常に柔らかく脆い体をしているため、ダイバーの吐いた泡が当たっただけでも崩れてしまうほどで、採集はきわめて困難です。

 

【繊毛のイルミネーション】
櫛板は、およそ 0.2 µm(0.2ミクロン) の極めて細い繊毛が密集して並ぶ器官です。 繊毛どうしは特殊なタンパク質構造によって互いに連結され、規則正しい動きや水流の方向が精密に制御されています(*1)。
虹色の帯が流れるように見えるのは、繊毛が連動して動くことで反射する光の角度が連続的に変化するためです。

 

【摂餌の為の変形】
普段は滑らかな楕円体ですが、摂餌の際には 袖状突起 を大きく広げ、まるで翼を展開した宇宙船のような独特の姿へ変形します。 さらに側面からは二対の 耳状突起 を長く伸ばし、波打つように動かすことで繊毛流が発生し、餌を口に運ぶ補助を行っていると考えられます(*2)。
主に橈脚類などの浮遊性動物プランクトンを捕食します。

 

【繁殖と大発生】
ツノクラゲは雌雄同体ですが、自家受精はせず有性生殖で繁殖します。 はっきりした繁殖期はありませんが、水温・塩分濃度・プランクトン量・イワシ類などによる捕食圧といった条件が整うと、一時的に 大発生(bloom) が起こることがあります。 黒潮の張り出し方や表層水温など環境要因の影響を受けやすく、その結果として伊豆半島では秋〜冬にかけて出現が目立つと考えられます。
また、クシクラゲの大発生は様々な環境要因によって起こることから、海洋環境の指標とするための研究が進んでいます。

 

映像では、袖状突起を大きく広げ、耳状突起を波打たせて摂餌行動をするツノクラゲの姿が記録されています。 体の中心部には捕食したプランクトンと思われるものが透けて見ています。
口付近にあるという2次触手も捉えている可能性がありますが未確認です。

シンカイウリクラゲの映像
▶ シンカイウリクラゲのYouTubeページを見る

食・利用

食用の情報はありません。
脆い体で採取が困難なため、飼育や展示もほとんどありません。

毒・危険性

ツノクラゲは「クラゲ」と呼ばれますが、刺胞動物門のクラゲ類とは異なり、有櫛動物門に属する生き物です。 クラゲのような刺胞細胞(刺胞)はなく、小型プランクトンを捕らえるための粘着性の細胞(Colloblasts)を備えています。 そのため、人が触れても刺されることはありません。

参考資料

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