概要
和名:シンカイウリクラゲ
英名:Abyssal comb jelly
学名:Beroe abyssicola Mortensen, 1927
撮影地:静岡県沼津市 水深1m
提供映像(サンプル映像は1280x720.30pです)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94fps
- 長さ:1分 10秒
- サイズ:349MB
分類・分布
有櫛動物門 > 無触手綱 > ウリクラゲ目 > ウリクラゲ科 > ウリクラゲ属 > シンカイウリクラゲ
北太平洋を中心に、水深450m~700m以深で報告されています。 稀に浅い場所で観察されることもあります。
特徴・雑学
瓜型で、口の反対側が尖ることは無く、両端は丸くなっています。
8本の櫛板は全て長さが等しく、長さは体長の1/2~2/3ほどです。
咽頭部は鮮やかな赤色を帯び、櫛板沿いや極板、口周辺にも赤い色素が点在します。
非常に大きな口をしており、クラゲを捕食することで知られています。
【繊毛のイルミネーション】
櫛板は、およそ 0.2 µm(0.2ミクロン) の極めて細い繊毛が密集して並ぶ器官です。
繊毛どうしは特殊なタンパク質構造によって互いに連結され、規則正しい動きや水流の方向が精密に制御されています(*1)。
虹色の帯が流れるように見えるのは、繊毛が連動して動くことで反射する光の角度が連続的に変化するためです。
【浅海との行き来】
日本近海における出現深度は、通常は数百メートルの水深ですが、潮流などの状況によっては分布水深が拡張することがあるようです。
三陸沖では、親潮系水の影響を受けた際に水深30mで観察された例が知られています。
また、夜間の表層プランクトンネットによる採集記録も報告されており、シンカイウリクラゲが日周的な鉛直移動を行う可能性が示唆されています(*A)。
【狩りのトリガー】
シンカイウリクラゲは小型のウリクラゲを捕食する肉食の動物ですが、偶然に目の前に流れてくるのを待つのではなく、積極的にハンティングをすると考えられています。
クシクラゲは体表から粘液を出しており、種によって粘液の組成が異なります。
この粘液の組成を科学的なシグナルとして感知して"嗅ぎ分け"、捕食可能な相手だと認識すると反応して積極的に捕食行動を示します(*2)。
本映像は静岡県沼津市にて12月に撮影したものです。 体色や櫛板列の長さ、反口側の丸み、網目模様が無いことなどからシンカイウリクラゲとしましたが、専門家による同定ではありません。 映像の利用の際はご注意ください。
食・利用
食用の情報はありません。
水族館での展示や研究用に利用されます。
毒・危険性
クシクラゲ(櫛クラゲ)の仲間は「クラゲ」と呼ばれますが、刺胞動物門のクラゲ類とは異なり、有櫛動物門に属する生き物で、刺胞細胞(刺胞)はありません。 そのため、人が触れても刺されることはありませんが、湾などの滞留する場所では刺胞動物のクラゲも集まる可能性が高いため、肌の露出には注意が必要です。
参考動画:摂餌時に変形するツノクラゲ
参考資料
- *A)日本クラゲ大図鑑
平凡社
峯水亮、久保田信、平野弥生、ドゥーグル リンズィー
- JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - *1)CTENO64 is required for coordinated paddling of ciliary comb plate in ctenophores
(CTENO64は有櫛動物における繊毛櫛板の協調運動に必要である)
城倉圭, 柴田大輔, 山口勝司,柴小菊, 牧野由美子,重信秀治,稲葉一男*
Current Biology (DOI: 10.1016/j.cub.2019.08.059)
▶ 読む - *2)A Study of the Feeding and Predatory Behavior of the Ctenophore Beroe abyssicola
(シンカイウリクラゲ(Beroe abyssicola)の捕食行動の解析)
Andrew Paley,Jacob Beemer
University of Washington, Friday Harbor Laboratories FHL 470 A: Research in Marine Biology(2021)
▶ 読む