シマイサキ

うなる魚

Rhynchopelates oxyrhynchus

シマイサキは暖かい海を好む魚で、伊豆半島ではあまり見かけません。 汽水域に現れ、食べると美味しいなどの情報は、1854年に刊行された『Fauna Japonica(日本動物誌)』にも掲載されています。 地方名も非常に多く、古くは現在よりも親しまれていた魚であると推測されます。

🔬 専門資料・出典引用(13件)

概要

和名:シマイサキ

英名:Sharpnose tigerfish

学名:Rhynchopelates oxyrhynchus (Temminck & Schlegel, 1842)

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > シマイサキ科 > シマイサキ属 > シマイサキ

【分布】南日本、西太平洋、インド洋

特徴・雑学

シマイサキは、やや細長く側扁した体を持ち、銀白色から淡い黄褐色の体側に数本の黒褐色の縦縞が走ります。 この縞模様は頭部から尾鰭付近まで続き、名前の「シマ」をよく表す特徴となっています。
名前に「イサキ」と付きますが、イサキ(Parapristipoma trilineatum)の仲間ではなく、シマイサキ科に属する別系統の魚です。 鱗の後ろ縁に細かな棘状の突起が並ぶ「櫛鱗(しつりん)」に覆われており、体表には独特のざらつきがあります(1)。

沿岸の浅い海域に生息し、特に内湾や河口などの汽水域で見られます。 海水と淡水が混じる環境にも適応し、砂泥底や岩礁が混在する浅場などを生活場所とします。

虎模様の尖った魚

英名の Sharpnose tigerfish は、sharpnose(尖った吻)と、体の縞模様を虎に見立てた tigerfish(虎縞の魚)を組み合わせたもので、「尖った吻をもつ虎縞の魚」という意味です。
また、学名 Rhynchopelates oxyrhynchus の種小名 oxyrhynchus も、ギリシャ語系の oxy-(鋭い・尖った)とrhynchos(吻・鼻先)に由来し、「尖った吻」を意味します。 英名と学名のどちらにも、シマイサキの特徴的な口先の形が名前として残されています。

音でコミュニケーションをとる魚たち

シマイサキは「グーグー」と音を出すことから、「鳴く魚」として知られ、英語では grunters(うなる魚)とも呼ばれます。 この音は浮袋に関係しており、浮袋の周囲にある発音筋を収縮させて振動させることで音を発します(2)。
水中は陸上よりも音が伝わりやすく、魚類にとって音は重要な情報伝達手段の一つと考えられています。 魚が発する音の役割については、まだ十分に解明されていない部分も多いものの、 これまでの研究では、捕獲や外敵などによる刺激を受けたときのほか、威嚇や争い、求愛・繁殖など、さまざまな状況で発音することが確認されています(3)(4)。

シーボルトが持ち帰った魚

1823年に来日したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、長崎に滞在した1823~1829年の間に、日本各地の動植物について調査し、膨大な標本や資料を収集しました。 そこには魚類の標本だけでなく、川原慶賀など日本人絵師によって描かれた生物の下絵も含まれていました。 これらの資料はヨーロッパへ持ち帰られ、のちに日本の動物を体系的に紹介する『Fauna Japonica(日本動物誌)』(5)の基礎となりました。

『Fauna Japonica』魚類編 図版VI・fig.3(シマイサキ)
出典: 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

ただし、『Fauna Japonica』に登場する魚をシーボルト自身が分類・記載したわけではありません。 魚類の研究を担当したのは、オランダのライデン博物館長コエンラート・ヤコブ・テミンクと、同館で脊椎動物を担当していたヘルマン・シュレーゲルでした。 二人はシーボルトが日本からもたらした標本や記録を研究し、日本の魚類を分類して『Fauna Japonica』魚類編(5)としてまとめています。

シマイサキは、それまで知られていなかった種として Therapon oxyrhynchus の名で『Fauna Japonica』に掲載されています。 現在の学名は Rhynchopelates oxyrhynchus (Temminck & Schlegel, 1842) とされています。

原記載では、細長い体、尖った吻、歯や鰭、体側の縞模様などが詳しく調べられているだけでなく、「日本名は Sima-sisaki(シマイサキ)」であることや「肉は非常に美味」と記し、 夏には日本南部の湾に現れ、河口で捕らえられ、大雨の後には川を遡ることさえある」という文化的、生態的な情報も掲載しています。 テミンクやシュレーゲルは日本を訪れていないため、これらの情報は標本を収集したシーボルトによるものと思われます。

『Fauna Japonica』魚類編 シマイサキ原記載(p.16–17)
出典: 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

[原文]
LES THÉRAPONS. 1. Therapon oxyrhynchus. Pl. VI, fig. 3. Cette espèce inédite, qui se distingue de toutes les autres connues par ses formes allongées, se rapproche sous plusieurs rapports de celle, que Cuvier range dans son sous-genre Pélates; elle lui ressemble aussi par sa physionomie. Supposant que ce sous-genre ne mérite guère d'être conservé, nous avons simplement fait de notre poisson un Thérapon. — Formes du tronc et de la tête allongées; museau pointu; œil peu grand et reculé; mâchoires armées de dents nombreuses et très délicates, celles de la rangée extérieure un peu plus grandes que les autres; palais et vomer dépourvus de dents; sousorbitaire antérieur en forme d'écaille, dentelé sur le bord et recevant le maxillaire. Préopercule assez arrondi, à bord armé de dentelures très fortes en guise d'épines; opercule muni d'une épine très forte, et d'une seconde, supérieure, assez courte; os surscapulaire et coracoïde sortant de la peau en forme de lame dentelée. Dessus de la tête et museau nus. Écailles peu grandes, finement ciliées sur le bord. Dorsale allongée, peu échancrée, le premier rayon plus court que le deuxième qui n'atteint pas tout-à-fait la longueur du troisième; caudale large, à peine échancrée; pectorale petite; épines de l'anale fortes, le premier plus de moitié plus court que le second. D. 12+10; A. 3+8. — Le corps est, à l'état frais, d'un bleu-verdâtre sale et pâle, qui passe en dessous à l'argenté, et qui est faiblement nuancé sur la tête de jaune et de rougeâtre. On voit sur les côtés du poisson quatre raies noirâtres, entre lesquelles se trouvent d'autres raies très peu visibles et souvent interrompues. Ces premières raies sont distribuées de la sorte que la supérieure longe le dos depuis le front jusqu'à la seconde dorsale; la deuxième raie passe au dessus de l'œil et aboutit à la fin de la dorsale molle; la troisième passe sur l'œil, depuis la pointe du museau jusqu'à celle de la caudale; l'inférieure commence derrière la pectorale et finit derrière l'anale. Ces raies toutefois, sont souvent interrompues et composées de taches plus ou moins allongées. La dorsale, dont le fond est grisâtre, offre une raie foncée à sa base, avec plusieurs taches oblongues à sa partie molle; la partie épineuse est d'un brun-noir vers le bord de la membrane. La caudale, d'un brun-pâle, porte de nombreux traits longitudinaux d'un brun foncé. Les autres nageoires ont une teinte jaune, mais la partie molle de l'anale est nuancée d'une teinte plus foncée. — Ce poisson atteint une taille de neuf à dix pouces. Son nom japonais est Sima-sisaki. Sa chair est excellente. Il fréquente en été les baies du Japon méridional et se prend souvent à l'embouchure des fleuves, qu'il remonte même après les fortes pluies.

[訳]
シマイサキ類 1. Therapon oxyrhynchus 図版VI、図3 この未記載種は、細長い体形によって、 これまで知られている他のすべての種と区別される。 いくつかの点では、キュヴィエが亜属 Pelates に分類した種に近く、 外見もまたそれによく似ている。 しかし、この亜属を維持するほどの理由はないと考え、 われわれはこの魚を単に Therapon 属の一種とした。— 胴体および頭部は細長い。 吻は尖る。 眼はあまり大きくなく、後方に位置する。 顎には非常に細かな歯が多数あり、 外側の列の歯は他の歯よりやや大きい。 口蓋および鋤骨には歯がない。 眼の下の前部にある骨は鱗状で、 その縁には鋸歯があり、上顎骨を受け入れる。 前鰓蓋骨はかなり丸みを帯び、 その縁には棘のような非常に強い鋸歯がある。 鰓蓋骨には非常に強い1本の棘と、 その上方に、やや短い第2の棘がある。 上肩甲骨および烏口骨は皮膚から突き出し、 鋸歯のある薄板状をなす。 頭部の上面と吻には鱗がない。 鱗はあまり大きくなく、 その縁には細かな毛状の突起がある。 背鰭は細長く、切れ込みは浅い。 第1棘条は第2棘条より短く、 第2棘条は第3棘条の長さにわずかに達しない。 尾鰭は幅広く、切れ込みはごく浅い。 胸鰭は小さい。 臀鰭の棘は強く、 第1棘条は第2棘条より半分以上短い。 背鰭 D. 12+10 臀鰭 A. 3+8。— 生鮮時の体色は、 くすんだ淡い青緑色で、 腹側では銀色へと移行する。 頭部には黄色と赤みが、 わずかに帯びている。 魚体の側面には4本の黒っぽい縦帯が見られ、 その間には、非常に目立たず、 しばしば途切れた別の縦帯がある。 これら主要な縦帯は次のように配置されている。 最上部の縦帯は、 額から第2背鰭まで背に沿って走る。 第2の縦帯は眼の上を通り、 背鰭軟条部の末端に達する。 第3の縦帯は眼を通り、 吻の先端から尾鰭の先端まで続く。 最下部の縦帯は胸鰭の後方から始まり、 臀鰭の後方で終わる。 ただし、これらの縦帯はしばしば途切れており、 多少なりとも細長い斑点が連なって構成されている。 背鰭の地色は灰色がかっており、 その基部には暗色の帯がある。 また、軟条部には いくつかの細長い斑点がある。 棘条部は鰭膜の縁に近い部分で 黒褐色を呈する。 尾鰭は淡褐色で、 濃褐色の縦方向の線が多数走る。 その他の鰭は黄色を帯びるが、 臀鰭の軟条部は、 より濃い色調を帯びている。— この魚は9~10インチほどの大きさに達する。 日本名は「Sima-sisaki(シマイサキ)」である。 その肉は非常に美味である。 夏には日本南部の湾内に生息し、 しばしば河川の河口で捕らえられる。 大雨の後には、 その川を遡ることさえある。

シマイサキの地方名

食・利用

シマイサキは冬に美味であるという評価が多い一方、まとまって漁獲されることが少ないため、市場では雑魚として扱われる地域もあります。 海辺の地域では食用にされており、刺身や塩焼き、煮付けなど、一般的な魚料理として食べられています(6)(7)。
「櫛鱗(しつりん)」という小さな棘のある鱗に覆われていますが、この櫛鱗の食感が良いとされ、鱗は落とさずに調理すると良いとされています(8)。

毒・危険性

人に対する毒性や危険性の情報はありません。

イサキの仲間の「スジミゾイサキ」 スジミゾイサキの水中映像

美味しい魚とされている

本家「イサキ」 イサキの若魚から成魚までのダイジェスト映像

小さい頃は縞模様がある

参考資料

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