概要
和名:オニイソメ
英名:Bobbit worm
学名:Eunice aphroditois (Pallas, 1788)
撮影地:静岡県伊東市5m
提供映像(サンプル映像は1280x720/30pです)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94fps
- 長さ:1分05秒
- サイズ:311MB
分類・分布
環形動物門 > 多毛綱 > イソメ目 > イソメ科 > Eunice属 > オニイソメ
日本各地、世界の暖海。潮間帯から水深40mに生息。
特徴・雑学
オニイソメは、温暖な海の潮間帯と呼ばれるごく浅瀬から、水深40mほどの海域に生息する、一般に「ゴカイ」や「多毛類」と呼ばれる生物の仲間です。
以前の分類では、多毛類とはゴカイやケヤリムシ、ウロコムシなど、実際に体表に多くの剛毛をもつ環形動物を指し、ミミズ類やヒル類は別のグループとして扱われていました。
しかし現在では分類体系の見直しが進み、分子系統解析などの結果から、かつて多毛類と呼ばれていた系統が、ミミズ類やヒル類の祖先にあたることが分かっています。
そのため、学術的な意味で「多毛類」と呼ぶと、ミミズやヒルも含まれることになりますが、従来の用法として「多毛類=ゴカイの仲間」という呼び方も依然として広く用いられています。
本ページでは、混乱を避けるため、旧来の意味での多毛類(いわゆるゴカイ類)を指して「多毛類」という名称を用いています。
多毛類(新旧分類のイメージ)
【多毛類の誕生】
ゴカイと呼ばれる多毛類の仲間は、約5億年以上前のカンブリア紀には、すでに誕生していました。
カナダ・ロッキー山脈に位置するバージェス山周辺では、約5億1000万年前の地層(バージェス頁岩)から、多毛類の一種 Canadia spinosa の化石が発見されています(*1)。
この化石は、体節や側足、剛毛といった多毛類に特徴的な構造を備えており、多毛類がカンブリア紀の海ですでに成立した体の基本設計を持っていたことを示す重要な証拠とされています。
【最大級の多毛類】
オニイソメは、多毛類の中でも最大級になる種で、長さが1mに達するものもいます。
2009年には、13年間使用された養殖いかだの内部から、 全長299cm、体重433gに及ぶオニイソメが採取された記録があります(*2)。
体の前方には鋭い顎を備えますが、これは普段は体内に収納されています。
岩の下や穴の奥で待ち伏せし、近づいた小魚や甲殻類に反応すると、 咽頭を反転させるように顎を外へ突き出し、瞬時に噛みついて捕食します。
【構造色の輝き】
オニイソメの体表は、青や紫、金属光沢を帯びて見えますが、これは色素による色ではありません。
体表に並ぶ微細な構造が光を干渉させることで生じる「構造色」によるもので、見る角度や光の当たり方によって色合いが変化します。
同じような仕組みは、草原が風で波打つことで色味が移ろって見える現象や、CD・DVDの表面が虹色に輝く様子にも見られます。
オニイソメの輝きは、色素そのものではなく、光の反射のしかたが変化することで生み出される現象です。
映像に映るオニイソメは、1mを超える長さがあるものと思われます。 頭部には小さな眼点が見え、体は金属質に輝いている様子がうかがえます。
食・利用
一般に「ゴカイ」と呼ばれる多毛類は釣り餌として広く利用されますが、オニイソメのような大型種は取り扱いが難しく、商用利用されることは多くありません。
毒・危険性
強い顎で噛みつく力があり、素手で触れると咬傷の危険があります。
参考動画:背中にマント上の鱗を持つウロコムシ
参考資料
- JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - *1)Canadia spinosa and the early evolution of the annelid nervous system
(Canadia spinosa と多毛類神経系の初期進化)
Luke Parry , Jean-Bernard Caron
Science Advances Vol.5,No.9 (2019):eaax5858:DOI:10.1126/sciadv.aax5858 ▶ 見る - 原色日本海岸動物図鑑・内海富士夫著・保育社
- *2)An extraordinarily large specimen of the polychaete worm Eunice aphroditois (Pallas) (Order Eunicea) from Shirahama, Wakayama, central Japan
(和歌山県白浜における多毛類オニイソメ (Eunice aphroditois) の異常に大型な標本について)
内田 博臣 , 棚瀬 秀朋 , 久保田 信
Kuroshio Biosphere Vol.5, March 2009 P9-15 ▶ 見る