ミナミハタタテダイ

嘘をつく幼魚

Heniochus chrysostomus

Blogger 撮影コラム:「ミナミハタタテダイ」

概要

和名:ミナミハタタテダイ

英名:Threeband bannerfish

学名:Heniochus chrysostomus (Cuvier, 1831)

撮影地:静岡県 伊豆半島沿岸・水深(不明)

提供映像(サンプル映像は1280x720/30pです)

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > チョウチョウウオ科 > ハタタテダイ属 > ミナミハタタテダイ

伊豆諸島、相模湾以南。西太平洋。

特徴・雑学

体側の黒い帯と白地のコントラストが目立つハタタテダイ属の一種。 ハタタテダイやムレハタタテダイとは近い親戚ですが、旗はそれほど長くありません。 成魚は、水深20m以浅のサンゴ礁や岩礁の斜面、ドロップオフ周辺で見られ、単独か小さなまとまりで行動します(*1)。

 

【偽る防御と再生能力】
幼魚の尻ビレには大きな眼状紋(オセルス-Ocellus)があります。 これは、捕食者は、まず急所である頭に襲いかかることに対する防御策で、目=頭のある場所を偽ります(*2)。 捕食者に「この目のあるところが頭だな」と思わせて襲わせることで、急所である頭を守る効果があるとされます(*3)。

魚類には、ある程度の自己修復能力が備わっています(*4)。 鱗や皮膚、血管、ヒレなど、体の末端に近い部分は、条件によっては、失われても再生する場合があります。
一方で、脳や眼を含む頭部のように、生命の維持に深く関わる重要な部位については、基本的に再生できません。
このような再生能力の違いを踏まえると、捕食者の攻撃を致命的になりやすい頭部から遠ざけ、尻ビレに向けさせることは、生存率を高めるための合理的な戦略であると言えます。
さらに、本当の目は黒い縞の中に入り込ませ、目であることをわかりにくくしています。 これは、眼のある「頭」の位置を分かりにくくする効果があるとされており、眼状紋と共に二重の防御となっています。

このような眼状紋は、多くの魚類において、幼魚の時期に見られる防御戦略です。 遊泳力や逃避能力がまだ未熟な幼魚が、たとえ捕食者に襲われたとしても、眼状紋によって最初の一撃をそらすことで生存率を高めていると考えられています。
ミナミハタタテダイも成長と共に尻ビレの眼状紋は消失します。

 

【南の海からの季節来遊魚】
ミナミハタタテダイは、伊豆半島ではあまり見かけない種類です。 水温の高い夏から秋に、南方の暖かい海から黒潮に乗って北上する個体があるものの、秋から冬へと水温が下がるとともに活性が低下し、越冬できません。
南方からやって来るものの、冬を越せずにいなくなる生物達を「死滅回遊魚」と呼んでいましたが、最近では「季節来遊魚」としています。 近年では真冬の水温がかつてより1度から2度高くなる傾向があり、季節来遊魚とされていた生物でも、越冬する種類もあります。

参考動画:眼状紋を持つタキゲンロクダイ幼魚

タキゲンロクダイ幼魚の水中映像
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食・利用

一般に食用として扱われることはほとんどありませんが、地域的な漁で漁獲された場合は利用されます。 観賞魚として流通することがあり、水族館展示や個人アクアリウムで飼育されます。

毒・危険性

ミナミハタタテダイに毒性はありません。

参考資料

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