カサゴのように海底に着底することはないものの、泳ぎ回る様子も無く、その場にたたずむようにしていることが多い魚です。 映像ではアカメバル、クロメバル、シロメバルの3種を分けず「メバル」の様子を捉えています。
概要
和名:メバル
英名:Darkbanded rockfish
学名:Sebastes ventricosus Temminck & Schlegel, 1843(クロメバル)
:Sebastes cheni Barsukov, 1988(シロメバル)
:Sebastes inermis Cuvier, 1829(アカメバル)
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:特に無し
- 主な水深:10m前後
- 映像特徴:メバルの水中映像
提供映像(サンプル映像はYouTube編集版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 総ビットレート:60374kbps
- 長さ:5分 55秒
- サイズ:2.50GB
分類・分布
【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > カサゴ目 > メバル科 > メバル属 > アカメバル・クロメバル・シロメバル
【分布】南北海道から九州、朝鮮半島
特徴・雑学
メバルは大きな目とやや丸みのある体を持つ魚です。 体色には環境や個体差がありますが、岩場や海藻の風景に溶け込む保護色となっています。 北海道南部から九州まで広く分布し、沿岸の岩礁域や海藻が茂る場所、防波堤周辺などに生息します。
食欲の秋?・成長や季節による摂餌の変化
昼間は岩陰や藻場などで過ごすことが多く、早朝と夕方に摂餌活動が最も活発となります。
一方、秋から冬には摂餌は断続的となり、季節によって活動リズムが変化するという研究報告もあります(1)。
主な餌は甲殻類や多毛類、小魚などで、幼魚では海中を浮遊するプランクトンであるカイアシ類などの小型動物を中心に捕食し、成長するにつれてヨコエビ類やエビ類、カニ類、小魚など、
より大型の餌を利用するようになります(1)(2)。
小さなプランクトンを食べているようだ
色ではないけど赤、黒、白・微妙なメバルの分類
以前は「アカメバル」「クロメバル」「シロメバル」は、体色の異なる同じ種類のメバルと考えられていました。 しかし、2002年に形態や遺伝的特徴の違いが報告され、2008年の分類学的な再検討(3)によって、それぞれ独立した3種として整理されました。
日本で一般に「メバル」と呼ばれるものには、アカメバル(Sebastes inermis)、クロメバル(Sebastes ventricosus)、シロメバル(Sebastes cheni)の3種があります。 3種は体色のほか、胸鰭や臀鰭の軟条数、側線の鱗数、頭部や各鰭の形などにも違いがあります。 ただし、それぞれの特徴には個体差や重なりがあるため、野外での識別は容易ではありません。 正確な同定には、複数の形態的特徴を組み合わせて確認し、場合によっては遺伝子解析を行う必要があります。
子を産む魚・卵胎生のメバル
メバルは卵ではなく稚魚を産む「卵胎生」の魚です。 秋になると繁殖期を迎え、雄は岩礁域に縄張りを作って雌を待ち受けます。 雌が近づくと、雄はアピールするように周囲を泳ぎ回ったりする求愛行動を繰り返し、十分に受け入れられると、雌雄は絡み合うように「交尾」を行います。 交尾後、雌は精子を卵巣内に数か月間保存し、卵が成熟した後に体内で受精が行われます(4)。 受精卵は母親の体内で成長し、冬から春になると、浅瀬の岩礁域や海藻の多い海域で、数千~数万匹の稚魚を出産します(5)。 稚魚の大きさは6mm~7mmほどで、成魚のような姿はしていません。 生まれてからしばらくの間は、海面近くでプランクトンを食べながら成長し、その後海藻帯や岩礁域へ移動して底生生活を始めます。
縄張りの範囲はかなり広い
卵胎生であるメバルにとってオスの尿は重要になる
尺メバルは10歳以上?・メバルの年齢と大きさ
自然界におけるメバルの寿命は、明らかになっていません。 相模湾東部の三浦半島沖で359個体の耳石を調べた研究では、調査個体中の最高年齢は雄が6歳(18.6cm)、雌が7歳(22.4cm)でした(6)。 ただし、これはメバルの生物学的な寿命を示すものではなく、調査で採集された個体の中での年齢と大きさです。
メバルの最大体長の記録は35.9cm・800gのオス(7)というものがありますが、採集地などの詳細が示されていません。 福島県の調査では、1歳で14cm台、5歳で25cm弱、5歳以上で雌雄で差が現れ、12歳のオスで26.9cm、13歳の雌で32.4cmという記録があります(8)。
全長30cm以上の個体の通称
メバルの地方名
- あおんじょう:白崎
- あかめばる:三崎
- あかんじょう:白崎
- がさ:弘前
- きんめばる:三崎、大社、長崎、有明海
- くろはちめ:新潟
- こびき:愛媛
- ごんだいめばる:鳥取
- しんちゅ:明石
- すい:東北
- そい:東北
- たけのこめばる:松山、関西
- つづのめ:富山
- てんこ:新潟
- はちめ:福井、七尾、寺泊、佐渡島
- ばつと:知多
- はとつめ:鳥羽
- はつめ:新湊
- ほしかり(る):対馬
- まばちめ:宇出津
- めばち:香住、宮津、松島、敦賀、象潟
- めばり:松江
- めばる:有明海、玄海、下関、東京、小名浜、和歌山、福良、江ノ島、銚子
- めまる:和歌山、太地
- もばらめ:富山
- わいな:広島
- わが:鳥羽
食・利用
醤油も味醂も使わない・いにしえのメバル料理
メバルと言えば、醤油と酒、みりんなどで甘辛く煮た煮魚を思い浮かべる人が多いでしょう。 しかし、このような味付けが一般的になったのは、醤油やみりんが庶民の食生活にも広く普及した江戸時代後期以降と考えられています(9)。 それ以前は、醤油はまだ一般家庭では貴重な調味料であり、魚料理には味噌や塩、酒などを使った調理法が主流でした。
戦国期の料理書をもとにした献立には、焼いたメバルを焼き豆腐とともに味噌水で煮る料理が見られます(10)。 江戸時代初期の料理書『料理物語』にも海魚の一つとして記載され、焼き物や煮物だけでなく、蒲鉾の材料にも適した魚とされていました。
江戸時代の魚類書では、鯛に匹敵する美味な魚とも評価され、京都御所の献立(11)や祭事の御膳にも用いられてきました。 現在では醤油、酒、みりん、砂糖などで煮る姿煮が代表的ですが、古い文献を見ると、味噌仕立ての煮物や焼き物、蒲鉾など、現代よりも幅広い調理法で親しまれていたことがうかがえます。
毒・危険性
あるの?ないの?意外と解明されていないメバルの毒棘
メバルの背鰭や臀鰭の棘には毒腺があることが知られており、日本産メバルの毒器官については詳細な組織学的研究が行われています(丹下,1954)。 また、メバル属全体の毒器官を比較した研究では、メバルは棘によって毒腺の発達に違いがあり、一部の棘では毒腺を欠く場合もあることが報告されています(12)。
一方で、カサゴやオニオコゼのような重い中毒症状を起こした事例や、メバルによる重大な刺傷事故の報告はほとんど見当たりません。 そのため、メバルの棘には毒器官が存在するものの、毒性や人体への影響については未解明な点が多く、今後の研究が待たれています。
寿命は10年から15年と長い
成魚と同じ形で生まれるが、出産数は非常に少ない
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- 方言にちなんだ日本の魚・高木正人著・自費出版
- 1)Feeding Ecology of Black Rockfish, Sebastes inermis
(メバル Sebastes inermisの摂食生態)
Chong-Kwan Kim, Yong-Joo Kang
Journal of the Korean Fisheries Society, Vol.32, No.5, pp.637–641(1999)
DOI:なし
▶ 見る - 2)Feeding Habits of the Sebastes inermis Species Complex in Western Wakasa Bay, Central
Japan
(若狭湾西部海域におけるメバル複合種群の食性比較)
Katsuaki Akeda, Taiga Yodo, Yoshiaki Kai and Motoi Yoshioka
Aquaculture Science(水産増殖)60巻2号(2012)207–214頁
DOI:10.11233/aquaculturesci.60.207
▶ 見る - 3)Taxonomic review of the Sebastes inermis species complex (Scorpaeniformes: Scorpaenidae)
(メバル Sebastes inermis 種群の分類学的再検討)
Yoshiaki Kai, Tetsuji Nakabo
Ichthyological Research, Vol.55, pp.238–259(2008)
DOI:10.1007/s10228-007-0029-7
▶ 見る - 4)Multiple-brooding rockfishes (Sebastes spp.) can utilize stored sperm from individual sires to
fertilize
consecutive broods
(複数回産仔するメバル属魚類(Sebastes属)は、同一雄由来の保存精子を利用して連続する産仔を行うことができる)
Neosha S. Kashef, David M. Stafford, Susan M. Sogard, John C. Garza, John C. Field, Elizabeth A. Gilbert-Horvath
Journal of Fish Biology, Vol.102, No.4, pp.952–961(2023)
DOI:10.1111/jfb.15341
▶ 見る - 5)Spatiotemporal patterns of parturition of the black rockfish Sebastes inermis in Sendai Bay,
northern Japan
(仙台湾におけるメバル Sebastes inermis の産仔時期と地域的変化)
Guido Plaza, Satoshi Katayama, Michio Omori
Fisheries Science, Vol.70, No.2, pp.256–263(2004)
DOI:10.1111/j.1444-2906.2003.00799.x
▶ 見る - 6)Age and Growth of the Black Rockfish Sebastes inermis in Eastern Sagami Bay off Miura Peninsula,
Central
Japan
(三浦半島沖の相模湾東部におけるメバルの年齢と成長)
Kenichi Utagawa, Toru Taniuchi
Fisheries Science, Vol.65, No.1, pp.73–78(1999)
DOI:10.2331/fishsci.65.73
▶ 見る - 7)Sebastes inermis
(メバルの最大記録) FishBase
FishBase Consortium
▶ 見る - 8)福島県沿岸におけるメバルの成熟と年齢組成
福島県水産試験場
福島県水産試験場研究報告(1986)
DOI:なし
▶ 見る - 9)研究機関誌「FOOD CULTURE No.5」しょうゆの話/醤油の歴史④
キッコーマングループ企業情報サイト
キッコーマン株式会社
▶ 見る - 10)戦国期毛利氏の饗応献立-料理再現と食文化の継承-
県立広島大学 健康科学科
▶ 見る - 11)近世の京都御所における食事について(2)
谷口歌子
立正女子大学短期大学部『研究紀要』第18集,9–21頁(1974)
▶ 見る - 12)The Venom Apparatus of California Rockfishes (Family Scorpaenidae)
(カリフォルニア産メバル類の毒器官〈カサゴ科〉)
Edward T. Roche, Bruce W. Halstead
California Department of Fish and Game, Fish Bulletin 156, pp.1–49(1972)
DOI:なし
▶ 見る