メバル

見上げるメバルたち

Sebastes ventricosus

Sebastes cheni

Sebastes inermis

カサゴのように海底に着底することはないものの、泳ぎ回る様子も無く、その場にたたずむようにしていることが多い魚です。 映像ではアカメバル、クロメバル、シロメバルの3種を分けず「メバル」の様子を捉えています。

🔬 専門資料・出典引用(18件)

概要

和名:メバル

英名:Darkbanded rockfish

学名:Sebastes ventricosus Temminck & Schlegel, 1843(クロメバル)

  :Sebastes cheni Barsukov, 1988(シロメバル)

  :Sebastes inermis Cuvier, 1829(アカメバル)

提供映像(サンプル映像はYouTube編集版です)

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > カサゴ目 > メバル科 > メバル属 > アカメバル・クロメバル・シロメバル

【分布】南北海道から九州、朝鮮半島

特徴・雑学

メバルは大きな目とやや丸みのある体を持つ魚です。 体色には環境や個体差がありますが、岩場や海藻の風景に溶け込む保護色となっています。 北海道南部から九州まで広く分布し、沿岸の岩礁域や海藻が茂る場所、防波堤周辺などに生息します。

食欲の秋?・成長や季節による摂餌の変化

昼間は岩陰や藻場などで過ごすことが多く、早朝と夕方に摂餌活動が最も活発となります。 一方、秋から冬には摂餌は断続的となり、季節によって活動リズムが変化するという研究報告もあります(1)
主な餌は甲殻類や多毛類、小魚などで、幼魚では海中を浮遊するプランクトンであるカイアシ類などの小型動物を中心に捕食し、成長するにつれてヨコエビ類やエビ類、カニ類、小魚など、 より大型の餌を利用するようになります(1)(2)

メバルの捕食行動の水中映像 メバルの捕食行動をとらえた水中映像

小さなプランクトンを食べているようだ

色ではないけど赤、黒、白・微妙なメバルの分類

以前は「アカメバル」「クロメバル」「シロメバル」は、体色の異なる同じ種類のメバルと考えられていました。 しかし、2002年に形態や遺伝的特徴の違いが報告され、2008年の分類学的な再検討(3)によって、それぞれ独立した3種として整理されました。

日本で一般に「メバル」と呼ばれるものには、アカメバル(Sebastes inermis)、クロメバル(Sebastes ventricosus)、シロメバル(Sebastes cheni)の3種があります。 3種は体色のほか、胸鰭や臀鰭の軟条数、側線の鱗数、頭部や各鰭の形などにも違いがあります。 ただし、それぞれの特徴には個体差や重なりがあるため、野外での識別は容易ではありません。 正確な同定には、複数の形態的特徴を組み合わせて確認し、場合によっては遺伝子解析を行う必要があります。

子を産む魚・卵胎生のメバル

メバルは卵ではなく稚魚を産む「卵胎生」の魚です。 秋になると繁殖期を迎え、雄は岩礁域に縄張りを作って雌を待ち受けます。 雌が近づくと、雄はアピールするように周囲を泳ぎ回ったりする求愛行動を繰り返し、十分に受け入れられると、雌雄は絡み合うように「交尾」を行います。 交尾後、雌は精子を卵巣内に数か月間保存し、卵が成熟した後に体内で受精が行われます(4)。 受精卵は母親の体内で成長し、冬から春になると、浅瀬の岩礁域や海藻の多い海域で、数千~数万匹の稚魚を出産します(5)。 稚魚の大きさは6mm~7mmほどで、成魚のような姿はしていません。 生まれてからしばらくの間は、海面近くでプランクトンを食べながら成長し、その後海藻帯や岩礁域へ移動して底生生活を始めます。

激しく噛みつきあう雄メバルの縄張り争い 雌の目の前で放尿するメバルの求愛

縄張りの範囲はかなり広い

メスの目の前で放尿するメバルの求愛 雄が雌の目の前で放尿するという変わったアピールをするメバルの求愛

卵胎生であるメバルにとってオスの尿は重要になる

尺メバルは10歳以上?・メバルの年齢と大きさ

自然界におけるメバルの寿命は、明らかになっていません。 相模湾東部の三浦半島沖で359個体の耳石を調べた研究では、調査個体中の最高年齢は雄が6歳(18.6cm)、雌が7歳(22.4cm)でした(6)。 ただし、これはメバルの生物学的な寿命を示すものではなく、調査で採集された個体の中での年齢と大きさです。

メバルの最大体長の記録は35.9cm・800gのオス(7)というものがありますが、採集地などの詳細が示されていません。 福島県の調査では、1歳で14cm台、5歳で25cm弱、5歳以上で雌雄で差が現れ、12歳のオスで26.9cm、13歳の雌で32.4cmという記録があります(8)

金色に輝く「尺」メバル 金色に輝く「尺メバル」と呼ばれる30センチ以上のメバルの水中映像

全長30cm以上の個体の通称

メバルの地方名

食・利用

醤油も味醂も使わない・いにしえのメバル料理

メバルと言えば、醤油と酒、みりんなどで甘辛く煮た煮魚を思い浮かべる人が多いでしょう。 しかし、このような味付けが一般的になったのは、醤油やみりんが庶民の食生活にも広く普及した江戸時代後期以降と考えられています(9)。 それ以前は、醤油はまだ一般家庭では貴重な調味料であり、魚料理には味噌や塩、酒などを使った調理法が主流でした。

戦国期の料理書をもとにした献立には、焼いたメバルを焼き豆腐とともに味噌水で煮る料理が見られます(10)。 江戸時代初期の料理書『料理物語』にも海魚の一つとして記載され、焼き物や煮物だけでなく、蒲鉾の材料にも適した魚とされていました。

江戸時代の魚類書では、鯛に匹敵する美味な魚とも評価され、京都御所の献立(11)や祭事の御膳にも用いられてきました。 現在では醤油、酒、みりん、砂糖などで煮る姿煮が代表的ですが、古い文献を見ると、味噌仕立ての煮物や焼き物、蒲鉾など、現代よりも幅広い調理法で親しまれていたことがうかがえます。

毒・危険性

あるの?ないの?意外と解明されていないメバルの毒棘

メバルの背鰭や臀鰭の棘には毒腺があることが知られており、日本産メバルの毒器官については詳細な組織学的研究が行われています(丹下,1954)。 また、メバル属全体の毒器官を比較した研究では、メバルは棘によって毒腺の発達に違いがあり、一部の棘では毒腺を欠く場合もあることが報告されています(12)

一方で、カサゴやオニオコゼのような重い中毒症状を起こした事例や、メバルによる重大な刺傷事故の報告はほとんど見当たりません。 そのため、メバルの棘には毒器官が存在するものの、毒性や人体への影響については未解明な点が多く、今後の研究が待たれています。

風景に溶け込むカサゴの水中映像 海底に留まって風景に溶け込むカサゴの水中映像

寿命は10年から15年と長い

仔魚を出産するオキタナゴ 卵胎生のオキタナゴは、大人と同じ形の仔魚を出産する

成魚と同じ形で生まれるが、出産数は非常に少ない

参考資料

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