クリイロカメガイ

羽ばたく巻貝

Cavolinia uncinata

クリイロカメガイは、貝殻をもったまま海中を漂って暮らす「有殻翼足類」の一種です。 “翼”のように見える足を羽ばたかせて泳ぎ、蜘蛛の巣のような粘液の網を広げて、微小なプランクトンを絡め取って食べます。

Blogger 撮影コラム:「Smells Like Roast chicken」クリイロカメガイ
12月の海でローストチキンに出会う話
🔬 専門資料・出典引用(8件)

逃げるチキン?

ある方からクリイロカメガイの泳ぐ姿が、「チキンが飛んで逃げているように見える」と言われました。 そういわれて見ると、鳥の丸焼きが全速力で逃げているように見えます。
普段は外洋に生息する生物なので滅多に観察することはありませんんが、伊豆半島での出会えるチャンスは12月であることが多く、まさに鳥の丸焼きのシーズンでもあります。 もしかしたら、次のクリスマスの頃「逃げるチキン」が話題になるかもしれません。

概要

和名:クリイロカメガイ

英名:Brown Butterfly

学名:Cavolinia uncinata (Rang, 1829)

  • 撮影場所:静岡県沼津市大瀬崎
  • 撮影時期:12月
  • 主な水深:水面近く
  • 映像特徴:羽根のような足を羽ばたかせて泳ぐクリイロカメガイ

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】軟体動物門 > 腹足綱 > 翼足目 > カメガイ科 > カメガイ属 > クリイロカメガイ

【分布】全世界の温帯、熱帯水域。

特徴・雑学

半透明〜飴色がかった繊細な殻をもち、殻長はおおむね数ミリ〜1cm未満とされます。 “翼”のように見える足(パラポディア)を羽ばたかせるように動かして泳ぐため、「シーバタフライ」と呼ばれる仲間です。

forma、なくなりました

クリイロカメガイには2亜種5型があるとされていましたが、近年ではそれらを細かく分けず、広く Cavolinia uncinata としてまとめて扱う考え方が一般的になっています。 かつては殻の形状や巻き方、地域差などによって「forma(型)」として区別されていましたが(1)、それらは海域による変異の範囲内である可能性も指摘されています。 そのため、古い図鑑や論文では細かな型名が記されている一方、現在の分類体系では整理・統合されつつあります(2)。

謎の大量発生

外洋の表層から中層を漂いながら生活する浮遊性の巻貝ですが、潮流や風向き、海況の変化によっては、沿岸のごく浅い海域で大量に観察されることがあります。 特に対馬暖流の影響が強まる時期には、日本海西部や東シナ海沿岸で大規模な集群(スウォーミング)が報告されており、水面近くに高密度で群れる様子や、交接・産卵行動も観察されています(3)。
また、台風や強風、高潮などによって沿岸へ吹き寄せられ、海岸一帯に大量漂着することもあります。 長崎県宇久島では、浜辺に帯状に堆積するほどの大規模漂着が記録されており、多い場所では数センチの厚さで殻が積もっていたと報告されています(4)。

泳ぎながら漁業をする?不思議な巻貝

クリイロカメガイを含むカメガイ類は、体の周囲に大きな球状の粘液網(mucous feeding web)を展開し、植物プランクトンや動物プランクトン、微小な浮遊粒子を捕獲していたという観察報告があります。 摂餌中の個体は海中でほとんど動かず静止しており、十分に餌粒子が集まると、その粘液網を回収して網ごと摂食します。 また、殻の後方には偽糞(pseudofeces)や糞粒が蓄積している様子も観察されており、同じ場所で繰り返し粘液網を展開していた可能性が示唆されています。 これらの観察結果から、有殻翼足類は単なる植物食性の生物ではなく、大型の浮遊粒子を含むさまざまな有機物を効率よく捕獲する、外洋性の濾過捕食者であることが示されています(5)。

溶けて消えゆく貝

カメガイ類の殻はアラゴナイトという溶けやすい炭酸カルシウムでできています。 そのため海洋酸性化が進むと殻の形成が難しくなり、殻が薄くなったり表面が溶けたりすることが知られています(6)。

食・利用

食用としての流通はありません。

毒・危険性

人に対する危険性はありません。

「コノハゾウクラゲ」という名の浮遊する巻貝 クダクラゲの水中映像ダイジェスト版。様々なタイプが存在する

貝の仲間には見えない

ゼリーの殻を持つ羽ばたく巻貝「カンテンカメガイ」 カンテンカメガイの水中映像。ゼリー状の殻を持ち海中を漂う浮遊性の巻貝

とても可愛らしく泳ぐ

参考資料

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