キンチャクダイ

動く模様

Chaetodontoplus septentrionalis

輝くような青い縞模様の美しいキンチャクダイですが、意外と模様は一定していません。 個体によっても差がある上に、同じ個体の左右も全く違いますが、どれも同じように見えるところが不思議です。

🔬 専門資料・出典引用(13件)

概要

和名:キンチャクダイ

英名:Bluestriped angelfish

学名:Chaetodontoplus septentrionalis (Temminck & Schlegel, 1844)

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】 > 条鰭綱 > スズキ目 > キンチャクダイ科 > キンチャクダイ属 > キンチャクダイ

【分布】相模湾以南、台湾、中国、朝鮮半島

特徴・雑学

体は左右に平たく、やや背の高い楕円形をしています。 体色は黄褐色から茶褐色で、体側には鮮やかな青色の細い縞模様が走ります。 幼魚は黒い体をしており、目の後方に黄色い帯がありますが、全長50ミリを超えるころから体に4本の青い縞模様が出始めます(1)

沿岸の岩礁やサンゴ礁などに生息します。 単独または少数で行動することが多く、海綿などの付着性の小動物や藻類などをついばむ雑食性の魚です。

動く縞模様・チューリングパターンの実証

キンチャクダイの体には、鮮やかな青い線が複雑に曲がりながら走っています。 この模様は左右で同じではなく、個体によっても線の曲がり方や分岐の仕方が異なります。 同じキンチャクダイ科の魚では、こうした縞模様が成長に合わせて変化し、線の間隔を保つように新しい線が生まれたり、線の形が組み替わったりすることが研究されています(2)

その仕組みを説明するものとして考えられているのが「チューリング・パターン(Turing pattern)」(3)です。 これは、皮膚の中で模様の形成を促す働きと、それを抑える働きが互いに影響し合いながら広がることで、もともと均一だった場所から自然に濃淡や縞模様が生まれるというものです。 線の一本一本について「ここに線をつくる」という細かな設計図があるのではなく、局所的な相互作用から一定の間隔を持った模様が自発的につくられていきます。

この理論を実際の魚で確かめたのが、大阪大学の近藤滋氏です。 近藤氏は、成長すると模様が変化するタテジマキンチャクダイに着目し、実際に飼育しながら縞模様の変化を観察しました。 すると、魚の成長によって縞の間隔が広がると、一本の縞がまるでファスナーが開くように二本へ分かれ、縞の数が増えていくことが確認されました。 この変化はチューリング理論によるコンピューター・シミュレーションの予測とよく一致し、1995年に『Nature』で発表されました(4)

70年以上前に数学者アラン・チューリングが理論として予測した「単純な相互作用から自然に模様が生まれる仕組み」が、実際の生物の模様形成と結びついた例として知られています。 キンチャクダイの青い線も成長とともに増えていきますが(1)、タテジマキンチャクダイと同じ仕組みによってつくられているかどうかは、まだ明らかになっていません。

魚は他人を識別する?・模様と識別の関係

キンチャクダイの青い模様は個体によってパターンが異なります。 魚類の一部では、顔にみられる個体ごとの差を利用して仲間を識別できることが知られています(5)。 キンチャクダイにも個体ごとに異なる色彩パターンがありますが、それを実際に個体識別に利用しているかどうかは分かっていません。

食・利用

刺網や定置網などで漁獲されることがありますが、一般に食用とはされません。 キンチャクダイ科は臭みが強く不味いとされ、食用にはされないという資料があります(6)

鮮やかな青い縞模様から観賞魚としても利用されています。

毒・危険性

台湾の資料(7)には有毒とするものがありますが、毒の種類や部位の記載はなく詳細は不明です。 一方、FishBase(8) では Harmless(無害)としています。

キンチャクダイとキヘリキンチャクダイの雑種とされる魚 アカネキンチャクダイの水中映像。最新の研究では雑種とされる

アカネキンチャクダイと呼ばれる

参考資料

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