イイジマウミヘビ

ウミヘビも溺れて死ぬ

Emydocephalus ijimae

Blogger 撮影コラム:「泡盛に入れないウミヘビ・イイジマウミヘビ」

概要

和名:イイジマウミヘビ(脱皮中に死亡)

英名:Ijima’s turtle-headed sea snake

学名:Emydocephalus ijimae Stejneger, 1898

撮影地:沖縄県 水深12m

提供映像(サンプル映像は1280x720.30pです)

分類・分布

脊椎動物亜門 > 爬虫綱 > 有鱗目 > コブラ科 > カメガシラウミヘビ属 > イイジマウミヘビ

琉球列島、台湾、中国

特徴・雑学

イイジマウミヘビは、コブラ科に属する爬虫類のヘビです。 繁殖を含む全ての生活を海中で過ごし、陸に上がることはありません。

 

【海で生きるための機能】
海水は体液よりも塩分濃度が高いため、海で生活する動物は体内に塩分が入りやすく、そのままでは脱水や電解質異常を起こしてしまいます。 そのため多くの海生動物は、腎臓とは別に余分な塩分を排出する専用の器官(塩分排出腺)を発達させています。

コブラ科のウミヘビでは、この役割を担う器官が舌の下にある「舌下腺(ぜっかせん)」で、塩分排出腺として機能しています。 舌を出し入れする動作に伴って塩分を多く含む分泌液を口外へ排出し、海水環境でも体内の塩分バランスを維持することができます。
塩分排出腺の位置は動物によって異なり、例えばウミガメが涙のような液体を流したり、海生イグアナが鼻から液体を出したりするのも、いずれも体内の余分な塩分を排出している現象です。

また、ウミヘビは皮膚そのものが呼吸器の一部として機能するほど特殊な体を持っています。 陸上のヘビではほとんど見られない能力ですが、ウミヘビは必要な酸素の約20〜30%を皮膚から直接取り込むことができるとされ、さらに二酸化炭素の排出の多くも皮膚が担っています。
この仕組みのおかげで、一部のウミヘビやエラブウミヘビ類は採餌中に2時間以上も潜り続けることができることが知られています。

しかも近年の研究では、体内の酸素状態に応じて皮膚への血流を変化させ、皮膚呼吸の量を自らコントロールしている可能性も示されています。 これは単なる受動的な仕組みではなく、生理的に調節可能な呼吸システムであることを意味します。
皮膚のすぐ下には毛細血管が密に発達し、表面構造も水中でガス交換が起こりやすい状態に進化しています。 いわば体表の広い面積を利用した「第二の呼吸装置」を持っているようなもので、この能力によって潜水中の酸素消費を節約し、水面へ浮上する間隔を大きく延ばすことが可能になります。

もちろん皮膚呼吸だけで生きることはできませんが、ウミヘビは体の大部分に及ぶ非常に長い肺を持ち、大量の空気を蓄えることもできます。 皮膚呼吸と巨大な肺という二重の呼吸システムを組み合わせることで、海中で長時間活動できるという驚くべき適応を実現しているのです。

 

【不要になった猛毒】
イイジマウミヘビを含む、カメガシラウミヘビ属のヘビは、同じコブラ科のエラブウミヘビ属のヘビと違い、陸に上陸することなく生活します。 食べるものは魚そのものではなく、魚の卵を専門に食べる生活をしているため、牙や毒腺が不必要となり、退化して小さくなっているという特徴があります。 研究によると、エラブウミヘビ属の毒の強さはハブの数十倍とのことですが、カメガシラウミヘビ属の毒は、弱毒または無毒と考えられています。
性格も大人しく、毒性も低いので安心できるウミヘビではありますが、エラブウミヘビ属のウミヘビと模様がよく似ているため、イイジマウミヘビだと判断して近づいたり触れたりするのは危険です。
エラブウミヘビも気性の荒いヘビではなく、ふざけて追い回したり、掴んで振り回したりするなど、人間から手を出さない限り安全であるとされています。 日本国内で正式に報告されたウミヘビによる咬症例は、20件以下と非常に少数です。

 

【海で生きるリスク】
エラブウミヘビ属のヘビは、陸に上陸して産卵しますが、イイジマウミヘビを含むカメガシラウミヘビ属のヘビは上陸はせず、海中で仔を出産する胎生のヘビです。 爬虫類のヘビが海中で卵を守ることはできませんが、胎生にすることで完全に海での生活ができるようになります。
上陸する必要がなくなったため、陸を進むための「腹板」も無くなりました。 腹板を持たないウミヘビは、サンゴや岩の粗い面に体を擦りつけるようにして脱皮しますが、陸上のヘビより脱皮が難しくなる可能性があると考えられています。

食・利用

泡盛に漬けたり、イラブー汁や燻製にされるのはエラブウミヘビであり、イイジマウミヘビは食材として利用されることはありません。

毒・危険性

イイジマウミヘビは魚卵食への適応で牙や毒腺が小さく退縮しています。 毒性も、弱毒または無毒とされますが、毒を持つウミヘビと同じような模様をしているため、間違えて触れたりすると危険な場合があります。 ウミヘビ観察時は、触れない・追い詰めない・逃げ場を塞がないことが重要です。

蛇と勘違いされるホタテウミヘビ

本物のヘビより長いダイナンウミヘビ

参考資料

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