サザエの漁労中に貝を持ち上げると、中にいたヤドカリが抜けて出てしまいました。
まったく意識していなかったので、ヤドカリも意表を突かれてしまったのかもしれません。
お腹に真っ赤な卵を抱えたホンドオニヤドカリのメスでしたので、慎重に元の貝を差し出したところ、元に収まってくれました。
概要
和名:ホンドオニヤドカリの抱卵
英名:------
学名:Aniculus miyakeiForest, 1984
- 撮影場所:静岡県伊東市
- 撮影時期:7月
- 主な水深:10m
- 映像特徴:ホンドオニヤドカリが真っ赤な卵を腹部に抱える様子。偶然殻から出た姿を撮影した希少映像。
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 長さ:------
- サイズ:------
分類・分布
【分類】節足動物門 > 軟甲綱 > 十脚目 > ヤドカリ科 > オニヤドカリ属 > ホンドオニヤドカリ
【分布】房総半島~九州、新潟~鳥取、台湾
特徴・雑学
ホンドオニヤドカリは、浅い海の岩礁域に生息する大型のヤドカリの一種です。 サザエなどの殻口の広い貝殻を好んで利用します。 鋏脚や歩脚には、周囲を取り巻くようにいくつもの段差があり、その縁から硬い毛が生えています。
力づくでも家を作る? ヤドカリの引っ越し事情
成長に伴い、より大きな貝殻へと引っ越しを行います。
通常は空き殻を見つけて移り住みます。
寿命であったりタコに襲われたりと、何かの原因で死んだ巻貝の殻であったり、引っ越したヤドカリが残した空き家であるかもしれません。
住宅事情はそれほど恵まれているわけではないようで、ごく稀に、生きているサザエの蓋をこじ開けようとしている様子が見られることもあります。
閉じた殻のわずかな隙間に鋏を差し込み、そのまま動かずに耐えるような、いわば持久戦の状態です。
あまりにも動きがないため、決着の瞬間まで見届けたことはありません。
サザエ漁をしていると年に数例はある
ヤドカリの祖先は宿を借りなかった?
ヤドカリの祖先はエビに近い姿で、殻に入らずに生活していたと考えられています。 ジュラ紀(約2億130万年前〜1億4500万年前)から白亜紀初期にかけての巻貝の化石からは、ヤドカリの存在はほとんど確認されていません。
最初の宿はアンモナイト 真っ直ぐなヤドカリの居心地のいい家
一方、白亜紀初期(約1億3000万年前)の地層からは、アンモナイトの殻を利用するヤドカリの化石が発見されています。 当時のアンモナイトは、現在の巻貝のように高く巻き上がる形ではなく、平面的に巻く「平巻」の殻を持っていました。 そのため、それを利用していたヤドカリの体は、強くねじれることなく、左右対称に近い形であったと考えられています。
厳しくなった宿事情 もっと強い家を探す
白亜紀の海では、「海洋革命」と呼ばれる大きな変化が起こります。 殻を砕く顎を持つ魚類や、強力なハサミを備えた甲殻類などの捕食者が現れ、それに対抗するように巻貝の殻は厚くなり、棘などの突起を発達させていきました。 一方でアンモナイトは次第に数を減らし、白亜紀末には恐竜とともに絶滅します。
家に合わせて自分を変える 右に捻じれたヤドカリ
こうした環境の変化に伴い、ヤドカリはそれまで利用していたアンモナイトの殻から、次第に巻貝の殻へと利用対象を移していったと考えられています。
現代の海では巻貝の多くが右巻きですが、白亜紀初期には左巻きの種も比較的多く存在していました。
ヤドカリは当初、左右いずれの巻きの殻も利用していたと考えられますが、やがて右巻きの巻貝が優勢になるにつれて、それに適応する形で体も右方向にねじれるよう進化したと考えられています。
右に捻じれた体をしたヤドカリがの産卵をすると、卵は左側の腹肢(exopod、endopod)、育児嚢(brood pouch)で保護されます。
右側の腹肢は縮小、または退化しいています。
ホンドオニヤドカリの脱皮標本
▲ 腹部は右に捻じれる
▲ 卵を守る育児嚢や腹肢は
左側のみで右には無い
食・利用
イシダイなどの釣り餌として利用されます。
伝統的に食べているという資料は見つかりませんが、三浦半島の三崎では、地域を盛り上げる食材にしようという試みで「アマガニ祭り」というイベントの開催資料があります。
毒・危険性
毒性はありません。
ベニヒモイソギンチャクが相棒
飼育で人気のヤドカリ
参考資料
- JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - The oldest in situ hermit crab from the Lower Cretaceous of Speeton, UK
(イギリス・スピー トンの前期白亜紀層から発見された最古の現地保存ヤドカリ)
René H. B. Fraaije
Palaeontology(2003)
DOI:10.1111/1475-4983.00286
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