アメフラシ

貝殻を捨てた巻貝

Aplysia kurodai

アメフラシの水中映像(YouTubeリンク)
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概要

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分類・分布

軟体動物門 > 腹足綱 > 真後鰓目 > アメフラシ科 > アメフラシ属 > アメフラシ

本州、四国かから中国、九州。

特徴・雑学

春になると一斉に現れるアメフラシは、もともとは殻を持つ巻貝の仲間です。 伊豆半島では3月~4月に一斉に現れ、初夏にはいなくなる季節の風物詩のような生物です。

【貝が貝殻を捨てる選択】
進化の過程でその殻は次第に小さくなり、現在では外からは見えません。 ただ、完全に消失したわけではなく、薄い殻が内部に名残として残っています。
大胆な進化の理由は、防御のあり方にあるとされています。 硬い殻によって身を守る巻貝の生き方から、より柔軟で環境に適応した防御へと進んだ結果、殻を持たない方が有利であると判断したと考えられています。
殻の為に大量の栄養を摂取する必要が無くなり、体は軽くなり、海藻の間や岩の隙間を自在に移動できるようになりました。 そして、防御力の代わりに獲得したのが、化学的な防御手段です。 アメフラシは外敵に襲われると、体内に蓄えた紫色の液体を放出します。 液体は海中に広がって煙幕のように働き、捕食者の視覚や嗅覚を撹乱することで逃走の時間を稼ぎます。

【雨降らし】
アメフラシの名前は、刺激を受けた際に放出する紫色の汁が水中で広がる様子を「雨雲(雨を降らせる雲)」に見立てたことに由来すると言われています。 また、古くから「この生き物をいじると雨が降る」という伝承があったり、雨の日に磯でよく見かけられたりすることから、雨を呼ぶ存在としてその名が定着したと考えられています。
梅雨の時期の生き物と思われがちですが、実施は4月頃になると一斉に現れます。
英語では"Sea hare"とウサギに例えられた名前が付いています。

【引き寄せて痛めつける、紫の汁】
アメフラシは外敵に襲われると、紫色のインクと乳白色の分泌物(オパリン/Opaline)が混ざった、紫色の「紫汁(しじゅう)」を放出します。 紫汁は単なる煙幕ではなく、捕食者の感覚に働きかける化学的な防御手段です。
白色の分泌物であるオパリンには、多くのアミノ酸が含まれており、これは餌の存在を示す化学信号として働きます。 捕食者はそれを餌と誤認し、放出された分泌物の方へ注意を向けるようになる「囮効果」があります。 一方で、インクに含まれる成分は捕食者の口や感覚器を刺激し、不快な反応を引き起こします。

拡散するアメフラシの紫汁(しじゅう) アメフラシの紫汁水中映像

危険を感じると放出する

捕食者に噛みつかれたアメフラシが紫汁を放出すると、美味しい匂いが下流に拡散されて捕食者の目標を本体からそらします。 誘われた捕食者が紫汁内に入る、またはアメフラシ本体に噛みつくなどの行動をすると不味さを感じ、個体を吐き出したり、パニックになり摂食行動そのものを中断します。
このようにアメフラシは、餌を模した化学信号によって注意を逸らすと同時に、不快な化学刺激によって攻撃をやめさせるという、二重の仕組みを利用しています。 捕食者の行動は混乱し、攻撃対象は本体から分泌物へと移るため、その隙にアメフラシは逃げることができます。
これは、誘引と忌避が同時に進行する『ファグモミミクリー/Phagomimicry(摂食模倣)』と呼ばれる防御行動です。

食・利用

アメフラシは一般的には食用とされていませんが、長崎県壱岐や島根県隠岐諸島では、食材として利用されてきた記録があります。
内臓を取り除いた後に加熱し、酢味噌などで和える調理法が知られています。 このような利用は主要な水産資源としてではなく、沿岸で得られる生物を活用する地域の生活文化の中で伝えられてきたものです。

毒・危険性

アメフラシは基本的に強い毒を持つ生物ではなく、人が触れたり扱ったりしても危険性はありません。 ただし、海藻を主食としており、摂取する海藻の種類によっては、人に有害な成分を体内に蓄積することがあります。 そのため、地域によっては食用とされるものの、内臓を除去や十分な加熱などの適切な処理が前提とされています。
アメフラシは積極的に人へ危害を加える毒を持つわけではありませんが、防御物質や食性に由来する影響には注意が必要な生物といえます。

連結して交尾する雌雄同体のアメフラシ アメフラシの交接水中映像

円になることもありえる

薄い色合いの「アマクサアメフラシ」 アマクサアメフラシ水中映像

砂地をグングン進む様子とつぶらな瞳

参考資料

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