ヤツシロガイの卵嚢|小部屋で育つ子ども達

Tonna luteostoma

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概要

撮影地: 静岡県伊東市 水深5m 10月初旬

分類・分布

軟体動物門 > 腹足綱 > 吸腔目 > ヤツシロガイ科 > ヤツシロガイ属 > ヤツシロガイ

北海道南部以南、本州、四国、九州、朝鮮半島 水深10m~200mの細砂底

特徴・雑学

不知火海とも呼ばれる九州西部の「八代海」で多く産することから「ヤツシロガイ」と命名されたといわれます*1。 殻径160ミリになる肉食性の巻貝で蓋はありません。
細砂底に棲み、普段は砂に潜っているためにダイバーでもあまり目にしない巻貝ですが、稀に大量発生して漁獲されることがあります*2.*6。

産卵期は秋から春とされています。 卵嚢は厚さ4ミリ前後のゼラチン質のシート状で、硬めのシリコンゴムの様な感触があります。 シートには小部屋が規則的に並び、各部屋に卵カプセルが産み付けられます。 卵カプセルには、およそ50個の受精卵が入ります。
卵はカプセルの受精卵は、胚 → トロコフォア → ベリジャーへと小部屋の中で育ちます。 温度条件にもよりますが、概ね約1か月で浮遊性のベリジャー幼生となって卵嚢から海へと旅立ちます。
小部屋の中で共食い(同胞食)は起こらず、胚は母貝由来のゼラチン質基質から栄養を得て育つと考えられています。 同属の Tonna galea では、約39.5cmの卵ロゼットに数千のカプセルが含まれ、各カプセル内で約100胚が34日で孵化した記録があります*3。

参考動画:ボウシュウボラの産卵


参考動画:テングニシの産卵

食・利用

巻貝本体は、主に刺身で利用することが多く、とても美味であるとされています。ただし一般的に流通することはなく、寿司店や料亭などの専門的利用に限られています*1。 また、中華料理の食材とされるという資料があります*2。
貝殻は置物や貝細工などに利用されます。おもちゃのラッパに使われたという記述があります*5。
卵嚢は「ウミホオズキ」のように利用されるという資料は確認されていません。

毒・危険性

巻貝本体の身に毒性はありませんが、他の肉食性巻貝同様に「内臓には毒性があるかもしれないので除去する」という市場の記述があります。
ヌメリの多い貝なので、入念なヌメリ取り下処理が必要になります*6
卵嚢に毒性の報告はありません。ただしゼラチン質のシートは破損しやすいので直接の接触は控えましょう。

参考資料

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