トウゴロウイワシ

水面際のトンゴロ

Doboatherina bleekeri

概要

和名:トウゴロウイワシ

英名:Flathead silverside

学名:Doboatherina bleekeri (Günther 1861)

(Hypoatherina valenciennei (Bleeker, 1853))

撮影地:静岡県伊東市 1~5m

提供映像(サンプル映像は1280x720/30pです)

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > ダツ目 > トウゴロウイワシ科 > トウゴロウイワシ属 > トウゴロウイワシ

南日本、朝鮮半島、シナ海からベトナムにかけての北西太平洋。
日本各地の沿岸浅所に普通に見られる小魚で、港内・磯・砂浜沿い、河口の汽水域などにも入り、ごく浅い水深を大きな群れで回遊します。

特徴・雑学

体長はおおむね10〜15cmほど。背びれが2つあり、体は銀白色で、硬く大きな鱗に覆われます。 ムギイワシやギンイソイワシと区別が困難ですが、トウゴロウイワシの肛門は腹鰭部分(基部と先端の中間)にあることで見分けられます。
名前に「イワシ」とつきますが、一般に“イワシ”と呼ばれるニシン目のマイワシ類とは別系統で、見た目が似ているために各地で「○○イワシ」と呼ばれてきた小魚の一つです。 食性は主に動物プランクトンで、水面近くを群れで泳ぎながら小さな餌をついばむように摂餌します。
繁殖は春〜夏にかけて行われ、海底の藻類に絡みつきやすい性質の、纏絡性沈性卵(てんらくせいちんせいらん)を産みつけます(*1)。 成長は早く、1年で成熟し、寿命は2年前後(長くても2〜3年ほど)と短命な“世代交代の速い魚”です。

 

【トウゴロウの由来】
近縁種のギンイソイワシと混同されやすく、地域名も非常に多彩です。 文献では「頭五郎鰯」「藤五郎鰯」などの表記が見られ、呼称が先に各地で成立していた可能性があります。
昭和初期の「日本の魚類」(田中茂穂著)では、日本各地での呼び名を列挙するとともに、「トオゴロイワシとは神奈川縣三崎の稱呼である。」とあり、三崎での呼び名が和名になったとも考えられます。
意味に関しては、「服(着物)を着たまま寝る」ことを方言で「とんごろ/とんころ」と呼び、鱗が硬く剥げにくい様子を“着物を脱がない”姿に見立てた、という説がしばしば紹介されます。

 

【死んでゆく魚】
鰯は、魚偏に弱いと書きますが、トウゴロウイワシはイワシの仲間でもないにもかかわらず、弱って海底へ落ちていく個体や、底に死魚が溜まっている場面に出会うことがあります。
小型で寿命が短く、群れが密集する魚は、急激な水温変化や低酸素・強い濁り・大きな群れによるストレスや体力消耗などで“まとまって弱る”ことがあり得ます。 その結果、海底に落ちてきたところを多毛類が捕食したり、たまった死魚を雑食性の魚(例:アイゴやチョウチョウウオ類)がついばむ光景につながります。
映像のような内湾の水面際は、こうした環境変化の影響を受けやすい場所でもあります。

食・利用

一般的には「不味い魚」とされ、積極的に食べる魚として全国流通することはありませんが、地域によっては食文化があります。
高知では「トンゴロ」と呼ばれ、内臓も鱗も取らずに素揚げにし、鱗が立ってパリパリになる食感を楽しむ食べ方が知られます。 近年は1尾ずつ凍結するIQF(バラ凍結)で業務用・通販向けに扱われることもあり、「凍ったまま素揚げで簡単に提供できる小魚」として紹介されています(*2*3*4)。
また、トウゴロイワシは多くの肉食魚の捕食対象であるため、ルアーや疑似餌のデザインに“トウゴロウイワシのシルエット”が採用されることがあります。

毒・危険性

人に危険な毒や棘の情報はありません。

参考動画:様々な用途に利用されるカタクチイワシ

カタクチイワシの水中映像
▶ カタクチイワシのYouTube版を見る

参考資料

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