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概要
サザエは日本の岩礁海岸を代表する食用巻貝で、磯ではごく身近な存在です。本映像では、岩に付着した海藻を歯舌でこそげ取るように食べる、サザエらしい摂餌の様子を見ることができます。
分類・分布
軟体動物門 > 腹足綱 > 古腹足上目 > リュウテン科 > リュウテン属 > サザエ
北海道南部から九州にかけての日本沿岸や朝鮮半島。潮間帯から水深30mの岩礁域。
特徴・雑学
【海藻を食べるサザエ】
サザエは丈夫な歯舌をもち、削り取るように海藻を食べる巻貝ですが、成長段階によって食べる海藻が変化することが知られています。
幼い個体ではサンゴモ類などの石灰藻類を食べ、成長するとテングサ類やカジメ類などの大型海藻を主な餌とするようになります。
海藻を食べることで鉄を取り込み、その一部を排泄や分解によって海に戻すため、海の中での鉄の再循環にも関わっている可能性があると考えられています。
人がサザエのワタ(消化腺)を食べることは、そこに蓄積された鉄分を取り込むことにもつながります。
これは、海藻を食べて鉄分を取り込むのと似た循環の関係とも言えるでしょう。
【サザエの角と伝承】
殻には立派な角のような突起が出ることもあれば、まったく見られない場合もあります。
これは、波当たりの強さなどの環境や、個体差によって変化すると考えられています。
殻や棘は外套膜から分泌される成分によって作られるため、成長の過程や環境によって、その形成のしかたが変化し、殻や棘の形に影響することがあります。
サザエの殻の成長点は殻口の縁部分のみであり、それ以外の部分は成長しません。
殻の先端部分には日周線と呼ばれる非常に細かな皺があり、1日に成長する単位とされていますが、日周線は肉眼ではほとんど確認できません。
肉眼で触れるザラザラとした細かい皺は成長脈と呼ばれ、ひと月ごと、あるいは季節ごとの成長の区切りとして現れるものです。
成長の途中で海藻の増減や、水質が変化したりすると、サザエの角は途中から生えなくなったり、逆に立派に発達したりと形が変わることがあります。
ただし、一度形成された角は、折れるなどの破損がない限り小さくなったり無くなることはなく、逆に小さな角が大きくなったり、折れた角が再生することもありません。
サザエの角は「地域」を示すものでもあり、各地にさまざまな伝承が残されています。
日蓮上人や弘法大師空海、源頼朝といった人物が登場するのも、土地ごとのお国自慢の一つなのかもしれません。
- 磯を歩く漁民がサザエの角で足を怪我して苦しんでいたのを見て、憐れに思った日蓮上人が念仏を唱え、サザエの角を無くしてくれた。
- 石橋山の戦に敗れて安房の国に逃れた源頼朝が、海岸でサザエを踏んで怪我をしてしまう。手当をした家臣たちが「サザエの角を無くしてください」と海に祈ったところ、サザエから角がなくなった。
- 源頼朝がサザエを踏んで怪我をした際、とても怒ったのでサザエから角がなくなった。
- 荒波で転がるサザエを見て憐れに思った弘法大師空海が、流されないよう念仏を唱えて角を与えた。
【サザエの成長と生息場所】
小さなサザエは、波打ち際から水深数mほどの浅い荒磯に多く見られます。
成長とともに次第に深い場所へ移動し、800gを超えるような大型個体は、水深15〜20mほどの岩礁で見られることが多くなります。
餌となる海藻がどの水深まで生えているかによって地域差はありますが、一般には水深30mほどまで生息するとされています。
なお、1kgを超えるようなサザエは非常に稀です。
【サザエの好む水深】
サザエ漁では、水深が重要な手掛かりとなります。
水温や潮の状況によって、その時々でサザエが集まりやすい「好む水深の帯」があるようで、漁ではその帯を探るように潜ることになります。
海藻の生息場所は急に変化することはありませんが、サザエの生息水深は静かに変化しています。
【驚愕の新種】
サザエには長い間、Turbo cornutus という学名が用いられてきました。
この名前は1786年に、英国の僧侶で博物学者でもあったライトフット(Lightfoot)によって記載されたものです。
しかし近年の研究によって、この Turbo cornutus は日本のサザエではなく、中国沿岸に分布する別種 ナンカイサザエ を指す名前であることが判明しました。
この混乱の発端は、英国の貝類学者 リーヴ(Reeve) が1848年に行った同定にさかのぼります。
リーヴはナンカイサザエと日本のサザエを混同し、日本のサザエにも Turbo cornutus という名前を適用してしまいました。
その結果、この誤った同定がそのまま受け継がれ、約170年にわたり世界の貝類研究者がこの名前を使用することになりました。
さらにリーヴは、シーボルトが日本で採集したサザエに Turbo japonicus という別の学名も与えましたが、このときモーリシャスに分布する全く別の種と混同してしまいました。
国際動物命名規約のルールでは、この学名はモーリシャス産の種に固定されており、日本のサザエには使用できません。
その後1995年には、ナンカイサザエがサザエとは別種として Turbo chinensis という名前で記載されましたが、これは実際には Turbo cornutus と同一種であり、結果として **T. chinensis は不要な新参異名(無効名)**となります。
このような経緯のため、日本のサザエには長い間、国際的に有効な学名が存在しない状態が続いていました。
この問題は生物学の世界でもよく知られており、海洋生物学に造詣の深かった 昭和天皇が、「サザエには、まだ学名がないのではないか」と、お話されたという逸話も伝えられています。
それほど身近で有名な貝でありながら、分類学的には長く整理されていない種だったのです。
そこで岡山大学の 福田宏准教授 らが古い文献や標本を詳しく調査した結果、日本でサザエと呼ばれる貝はこれまで正式に命名されたことがないことが明らかになりました。
このため新たにTurbo sazae Fukuda, 2017という学名が与えられました。
食・利用
サザエは壺焼き、刺身などで広く利用される代表的な食用貝です。
【伊豆の釜サザエ】
大きなサザエは大味で美味しくないと言われることもありますが、実際にはそうでもありません。
伊豆では、重量1kgに迫る大型のサザエがブランドとして扱われており、伊東では「釜サザエ」、下田では「S級サザエ」と呼ばれ、刺身や壺焼き用として販売される人気商品となっています。
成長したサザエは深い場所へ移動しますが、深い海底が海岸のすぐ近くまで迫る急峻な海底地形を持つ伊豆半島では、大型のサザエが比較的身近な海で見られるのも特徴と言えます。
毒・危険性
特に毒はありません。