概要
撮影地: 静岡県沼津市 水深12m
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 長さ:0分44秒
- サイズ:215MB
分類・分布
脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > ハタ科 > マハタ属(アカハタ属) > オオモンハタ
南日本~琉球列島、インド洋、紅海
暖かい海域に生息する魚ですが、近年は水揚げも多く、海中でも頻繁に観察されます。*1
特徴・雑学
映像は、透明で薄く柔らかいプラスチック片に対してオオモンハタが咥えてから吐き出すという行動を繰り返す様子が記録されいます。
ハタ類の捕食はまず視覚のトリガーで始まります。反射やヒラヒラといった動きが小魚や甲殻類に見えたときに接近と捕食が起こりやすくなります。
咥えた後は、口腔内の"味覚"がアミノ酸などの化学信号を検出し、"機械的"に硬さや弾力や噛み応えを評価し、"嗅覚"が近接した匂い情報を補います。
これらの「情報を統合して餌ではないと判断」すると、摂餌を中止して口から排出します。
海中でプラスチック片に、細菌や珪藻などのヌメリ膜である「バイオフィルム」が付着すると、餌場に近い匂いの手掛かりを発する場合があり餌と誤認して飲み込むリスクが高まります。
口腔内の確認で"無味で硬い"と判定されれば多くは吐き出されます。*2
【視覚と動体視力】
動いている小型の物体に反応しやすく、静止している物体への反応は弱くなる傾向があります。
網膜から視蓋へと続く運動選択性の神経回路は、小さく動く点を"獲物"の手掛かりとして捉えます。
空間分解能はおよそ「1度の視野の中で黒白しま模様を3〜6組見分けられる」程度です。
たとえば距離1mなら、しま1組(黒+白)の幅が約2.9〜5.8mmより大きければ見分けやすくなります。
これは人間の視力と比べると桁違いに弱い視力ですが、魚類の中ではやや良い視力です。
動きやコントラストが加わるとによって識別は向上するので、光の反射やヒラヒラの動きは、オオモンハタにとって「餌らしさ」を高めることになります。
【味覚】
味を感じる感覚器である味蕾は主に口腔と咽頭に分布します。さらに鰓弓や鰓耙にも味蕾が見られるという報告があります。*3
口の中に取り込んだ対象から溶け出すアミノ酸やヌクレオチドなどの化学成分を、それらの部位が検知して栄養価の有無を判断します。
視覚によって動きのある無機的なプラスチックを咥えた後、口内の感覚器官で「味が乏しく匂いも弱く、質感も硬い」と判断した場合は吐き出すと考えられます。
【地方名と地域】
・徳島県海陽町宍喰:イセギ/イギス・高知県:モブシ/マス/イギス・愛媛県:マス/イギス・三重県:マス/ハタマス/アズキマス
・静岡県:ゲンジ(沼津)・和歌山県串本:イギス・長崎県:モアラ/ノミ・熊本県:シブクメ・宮崎県:イギス/アラ(混称)
・鹿児島県:ニバイ/ネバリ/シルネバリ/スミチャ/モブシ 等・沖縄県:イシミーバイ(ハタ類の総称)、ジュウシルーミーバイ
参考動画:オオモンハタ
食・利用
身は透明感のある上品な白身で、刺身の皮霜造りや湯引き、昆布締め、煮付け、椀物、しゃぶしゃぶに適します。洋風ではポワレやアクアパッツァもよく合います。
市場での評価はハタ類の中では中から上の帯に位置します。
流通量は多くなく、定置網や釣り物として飲食店向けに回ることが多いため、一般の鮮魚店では見かけにくい魚です。
海外の香港や華南ではガルーパとして活魚の清蒸需要が高く、地域によっては一般鮮魚としてグリルや煮込みにも利用されます。
毒・危険性
有毒な棘や毒腺は持ちませんが、背鰭の棘とエラ蓋の縁は鋭いので取り扱い時に注意が必要です。
参考資料
- JAMSTEC BISMaL bunnrui (分類情報) ▶ 見る
- 原色魚類大図鑑 北隆館
- 神奈川県水産技術センターコラムNo.45 *1
相模湾でのハタ類定着 ▶ 読む - Feeding behavior responses of a juvenile hybrid grouper, Epinephelus fuscoguttatus♀ ・ E. lanceolatus♂, to microplastic.*2
Jiayi Xu, Daoji Li
Environmental Pollution(Elsevier)268(Part A), Article 115648, 2021 ▶ 読む - Morphological investigation of the gills of the dusky grouper Epinephelus marginatus (Lowe, 1834) using gross anatomy and scanning electron microscopy.*3
Mohamed A. M. Alsafy, Samir A. A. El-Gendy
Microscopy Research and Technique(Wiley) 85(5): 1891-1898 ▶ 読む