概要
和名:クサヤモロ
英名:Mackerel scad
学名:Decapterus macarellus (Cuvier, 1833)
撮影地:静岡県伊東市 水深8m
提供映像(サンプル映像は1280x720/30pです)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94fps
- 長さ:1分 58秒
- サイズ:563MB
分類・分布
脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > アジ科 > ムロアジ属 > クサヤモロ
伊豆諸島、琉球列島を含む世界の暖海域。
特徴・雑学
体は細長い紡錘形で、光の当たり方によって体側に一本の青いラインが目立ち、尾鰭が黄味を帯びます。
クサヤモロという和名は、伊豆諸島の特産品「くさや」の原料として優れることから付けられた名称として紹介されることがあります。
地域によって、「アオムロ」、「シロムロ」などと呼ばれることもあります。
また、「ムロアジ」を、標準和名のムロアジ(Decapterus muroadsi)としてではなく、ムロアジ"属"全体の呼び名として使うこともあるため、「ムロアジ」、「ムロ」という呼び名にクサヤモロも含まれる場合があります。
ところが、「ムロ」は、クサヤモロの地方名である地域もあり、またムロアジ属のモロ(Decapterus macrosoma)のことである場合もあります。
属という大枠でも地方名(方言)が使われることがあるため、地域の名前になじみが無いと聞いただけでは種類がわかりません。
【くさやのクサヤモロ】
ムロアジ属の魚は各地で干物や加工品に利用されますが、伊豆諸島では発酵干物「くさや」に加工されることでよく知られています。
「くさや」は、塩水を捨てずに継ぎ足して用いる「くさや汁」を繰り返し使う点が大きな特徴で、単なる干物ではなく、発酵食品としての側面を持ちます。
魚をくさや汁に浸けることで、塩と微生物の作用によりタンパク質が分解され、うま味成分(アミノ酸など)が増加するとされており、抗菌性を示す成分が報告された研究例もあります(*1)。
クサヤモロはムロアジ属の中でも鮮度の低下が早い魚ですが、冷蔵技術がなく、塩も貴重であった島の暮らしの中で、長期保存が可能で、なおかつ美味しく食べる方法として「くさや」が受け継がれてきました(*2)。
一般にクサヤモロは「くさや」との相性が良いとされ、ムロアジ属の中でも上質なくさやの原料魚と評されることがあります。
ただし、最終的な味や香りは、原料魚だけで決まるものではなく、島ごとの伝統や、作り手によって変わるもので、それも楽しみのひとつとなっています。
【クサヤモロの地方名】
アオムロ(伊豆諸島、小笠原諸島)3A・シロムロ(静岡県伊東、熱海市網代)*3B・シッカリ(伊豆諸島神津島)*3A・アオサギ(和歌山)*3A
▲ 静岡県伊東市ではシロムロアジと呼ばれるクサヤモロ
食・利用
鮮度の落ちるのが早いクサヤモロを含むムロアジ属の魚は、冷蔵での流通が難しかった時代には、未加工の鮮魚として広域に流通することはほとんどなく、主に漁獲地周辺で消費されていました。
一方で加工品としての需要はあり、伊豆諸島の発酵干物「くさや」をはじめ、干物や、鰹節と同様の製法で作られる「むろ節」などに利用されてきました(*4)。
むろ節は主に九州地方で生産され、うどんの出汁などで使われてきたなど、加工品であっても地域色は強いものでしたが、流通環境や情報網の発達により、現在では全国的に知られる存在となりつつあります(*5)。
くさやもまた、伝統的なくさやにとどまらず、カレーやチーズ、マヨネーズと組み合わせた商品や、独特の匂いを抑えた加工品が開発されるなど、時代や嗜好の変化に合わせて姿を変えながら受け継がれています(*2)。
毒・危険性
クサヤモロ自体に特有の毒、棘などの情報はありません。
参考動画:伊豆諸島の特産ともいえるタカベの群れ
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)/鹿児島大学総合研究博物館
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - 学研の図鑑LIVE魚・学研・本村浩之総監修
- 原色魚類大図鑑・北隆館・阿部宗明監修
- *1)Corynebacterium kusayaたちの今昔
小山 茂
島しょ医療研究会誌 No.11 p25-31(2011)
▶ 見る - *2)くさやのひみつ
一般社団法人 新島OIGIE
にいじまぐ3号(2021)
▶ 見る - *3A)伊豆、小笠原諸島の魚・クサヤモロ
東京都島しょ農林水産総合センター
▶ 見る - *3B)伊豆半島各地の魚の方言・逆引き編(サ行)
静岡県水産・海洋技術研究所 伊豆分場
▶ 見る - *4)にっぽん伝統食図鑑・節類
農林水産省
▶ 見る - *5)その他の節(雑節)・むろ節
にんべん
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