コワタクズガニ|磯の擬態王

Micippa philyra

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概要

撮影地: 静岡県伊東市

分類・分布

節足動物門 > 軟甲綱 > 十脚目 > ケアシガニ科 > ワタクズガニ属 > コワタクズガニ

東京湾から沖縄諸島、ハワイ、南太平洋、インド洋、アフリカ東岸、紅海

特徴・雑学

コワタクズガニは、潮間帯付近の比較的浅い岩礁に棲息します。
体表に「面ファスナー」のような鉤状剛毛(hooked setae)があり、海藻や海綿などの素材をちぎって付着させ、 背景に溶け込む「装飾擬態(decoration)」を行うクモガニ科の仲間です。
住処周辺の素材を付着させることから、動かないと見失うほどの同化度を示し、本来の体形が分からなくなることもあります。 クモガニ科の中には、装飾の素材に化学的防御をもつ海藻・海綿、刺胞動物を選好する例も知られます。

体の部位ごとに剛毛の密度や形状が異なり、装飾が保持されやすい部位とそうでない部位があります。 コワタクズガニについては、腹面、ハサミ脚に装飾は見られません。
隠れ場所が少ない環境では装飾量を増やす傾向が見られるなど、環境に応じた可塑的な行動が報告されています。

クモガニ科の全ての種が装飾擬態を行う訳ではありません。一般に小型種ほど装飾の必要性が高く、大型種は装飾が減少すると考えられています。 世界最大の蟹と言われるタカアシガニはクモガニ科ですが、装飾によるカムフラージュの例は極めて稀です。 大型な上に殻も硬いために捕食される確率が低く、装飾の必要が無いためだと考えられています。

参考動画:アケウス


参考動画:モクズショイ


参考動画:タカアシガニ

食・利用

一般的な市場流通はありません。観察・撮影・教育素材としての利用が中心です。

毒・危険性

個体が装着している素材由来の刺激に注意してください。
種自体に毒性はありませんが、体表に付着させた海綿やガヤなどの刺胞動物の一部には毒性や皮膚刺激を持っている場合があります。 素手での接触や不用意な触察は避け、観察は器具や手袋着用が無難です。

参考資料

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