概要
和名:イシダイ(カメのフジツボを摂餌)
英名:Striped Beakfish
学名:Oplegnathus fasciatus (Temminck & Schlegel, 1844)
撮影地:静岡県伊東市 水深10m
提供映像(本ページのサンプル映像は1280x720/30pです)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94fps
- 長さ:1分 13秒
- サイズ:354MB
分類・分布
脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > イシダイ科 > イシダイ属 > イシダイ
北海道南部以南、台湾、中国
特徴・雑学
若いイシダイは明瞭な縞模様ですが、体長が29センチほどになると未成魚から雌雄に分かれ、模様に差が表れ始めます(*1)。 オスは成長すると徐々に縞が薄れ、やがて口元のみが黒い姿に変わります。 一方、多くのメスは成長しても縞模様が消えることはありませんが、一部のメスは縞模様が不明瞭になる場合もあるようです(*2)。
【強靭な顎と学習能力】
獲物を瞬時に吸い込むハタなどの口の構造とは異なり、イシダイの口は大きく開く構造ではありません。
そのかわりに強靭な咬合力と歯を持ち、海底のフジツボや貝類を噛み砕いて食べることができます。
映像は、アオウミガメをつつく若いイシダイです。
一目散に近づいていく様子は、カメに美味しいフジツボが付いていることを認識しているように感じられます。
イシダイが近づくと、カメは泳ぐのをやめて止まるので、歓迎はしているようです。
ただ、咬む力が強すぎるのか、嫌がるような素振りも垣間見えます。
イシダイは、魚類の中でも学習能力が高く、水族館では飼育員を認識したり、餌の時間を憶えていたりするようです。学習能力の高さを示す展示にはイシダイがよく登場します。
食・利用
イシダイは高級魚として扱われ、刺身、塩焼き、煮付けなどの和食をはじめ、さまざまな料理に利用されています。しっかりとした食感と、ほのかに漂う磯の香りが特徴です。
【養殖の試みと交雑種の開発】
養殖しようという試みは、50年以上前から行われています(*3)。しかし、イシダイは生後約1年で成熟し、産卵期に入ると成長が停滞するため、効率的な養殖が難しいとされてきました。また、病気の発生も養殖の課題とされています。
それでも、大型になるほど価値が高まり、天然ものの漁獲には周期的な変動があることから、安定供給を目指した養殖の試行錯誤は今も続いています。
近年では「地産地消」の流れを背景に、各地でブランド魚としての畜養(短期蓄養)が盛んになってきました(*4*5*6)。
さらに、海ではなく陸上での養殖技術の開発や、成長が早く病気に強いイシガキダイとの交雑種「キンダイ(イシガキイシダイ)」の導入など、新たな取り組みも進められています。
毒・危険性
顎の力が強いので、釣り上げた直後などの場合は、口の中に指などを入れないように注意が必要です。イシダイに限らず、水揚げ後の魚の歯で指を怪我をする事例は多くあり、指を欠損してしまう場合もあります。専用の道具を使用したり、手袋の着用が推奨されます。
近縁のイシガキダイはシガテラ毒を蓄積する事例がありますが、食性の違いからか、イシダイにシガテラ毒の蓄積は確認されていません(*7)。
参考資料
- 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)BISMaL
▶ 見る - 新訂 原色魚類大図鑑(北隆館)
▶ 見る - *1)イシガキダイおよびイシダイの体色はん紋にあらわれた2次性徴
道津喜衛・夏苅豊
長崎大学水産学部研究報告 第24号(1967)
▶ 読む - *2)イシダイ成魚の体色,斑紋に現われた雌雄差
道津喜衛
水産増殖 Vil.11 No.2(1963)
▶ 読む - *3)小笠原におけるイシダイ養殖の可能性
東京都島しょ農林水産総合センター(2010)
▶ 読む - *4)定置網で漁獲されたイシダイの短期畜養による価格の向上
村上哲士・鎌滝裕文
神奈川県水産技術センター(2017)
▶ 読む - *5)漁港施設の有効活用ガイドブック
水産庁 漁港漁場整備部(2021)
▶ 読む - *6)小田原市学校給食 市内産食材を積極活用
株式会社タウンニュース社
タウンニュース(2023)
▶ 読む - *7)熱帯性魚類食中毒シガテラのリスク評価のための研究
大城直雅
国立医薬品食品衛生研究所(2016)
▶ 読む