ダイビングポイントで岸から海に入った直後、目に入った見慣れない銀色の魚が、ヒラスズキの若魚でした。 お供にギンガメアジを引き連れて泳いでいるようで、堂々としていました。 この日は流れ藻や流木と共に、沢山の幼魚が流れ着いていたので、もしかしたら獲物を狙って来たのかもしれません。
概要
和名:ヒラスズキ
英名:Blackfin seabass
学名:Lateolabrax latus Katayama, 1957
- 撮影場所:静岡県伊東市川奈
- 撮影時期:2025年9月
- 主な水深:1m
- 映像特徴:20センチほどの若いヒラスズキ
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
- コーデック:H264-MPEG4AVC
- 解像度:1920x1080
- フレームレート:59.94
- 長さ:0 分 38 秒
- サイズ:186MB
分類・分布
【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ科 > スズキ属 > ヒラスズキ
【分布】能登半島以南・茨木県以南から鹿児島(1)
特徴・雑学
体高がやや高く、「平たい」体形と黒味を帯びる各鰭が特徴。よく似たスズキ(Lateolabrax japonicus)に比べて沖合に面した荒磯を好む傾向が強いとされます。
ヒラスズキとスズキ 棲む場所の違い
映像は体長約15cmの若魚で、湾内の波打ち際から5メートル、水深は2メートルというごく浅い場所に現れたものです。 様々な魚種が群れる中、ヒラスズキにはギンガメアジが寄り添うように泳ぐ様子が見られました。 スズキは内湾、汽水域、河口域など、塩分濃度の低い海域に生息することで知られますが、仔稚魚も同様の環境で過ごします。 対照的にヒラスズキの仔稚魚は内湾や沿岸の砕波帯など、極めて浅い海域で生息することが確認されており、塩分濃度の低い河口域は主生育場ではないと考えられています(2)。
ヒラスズキの食性
食性は肉食性で、小魚や甲殻類を主に捕食します。仔稚魚の頃は周囲の他種仔魚や橈脚類などの動物性プランクトンを捕食します(3)。 捕食行動は、水温や潮の干満による影響を受けるので一概には言えないと考えられていますが、夏の高水温時には昼間よりも夜間に行う可能性が高いという報告もあります(4)。
意外と長寿 ヒラスズキの繁殖と成長
西九州沿岸で冬〜早春(概ね1〜3月)に産卵がピークとされています。 性成熟は2歳から始まり、体長は雌で約38センチ、雄で36センチ、3歳で概ね性成熟し、メスの方がやや成長が早いと考えられています。 ヒラスズキは雌雄異体で、性転換魚であるという証拠は示されていません。
最大の年齢は雌雄とも11歳(5)。
幻の魚を完全養殖 ヒラスズキ養殖化の試み
ヒラスズキの養殖は、現時点ではまだ実用化された産業とは言えず、研究・実験段階にある魚種です。
近年、大学や研究機関によって人工授精や稚魚の育成といった初期段階の技術は確立されつつありますが、卵から成魚までを安定して育て、さらに次世代へとつなぐ「完全養殖」には至っていません。 特に、産卵行動や成長環境の再現が難しく、人工環境ではストレスの影響も大きいため、安定した飼育が大きな課題とされています(6.7)。
荒磯の王者は磯釣りの王者
ヒラスズキは、磯釣りにおける憧れのターゲットとして知られています。 外洋の荒磯の波の中で狙うスタイルは危険と隣り合わせですが、その迫力と達成感から「磯の王者」と呼ばれ、多くのアングラーにとって特別な存在です。
力強い"引き味"を持つうえ、流通量が少なく食味にも優れることから、「釣って良し・食べて良し」の魚としてゲームフィッシングの世界で一目置かれています(8)。
食・利用
上質な白身で、刺身・皮霜造り・炙り・昆布締め・塩焼き・ポワレ・フライなど多用途で、「フグにも負けない」と評価されることもあります(9)
関東より関西での需要が多く、ヒラスズキを「滅多に入らない特別な魚」としている料亭やレストランが多くあります(10)
流通量は少なく一般への流通は希少です。汽水域に棲息しないため臭みが少ないと評価され、同サイズのマルスズキより高値となる傾向があります。
安定した供給が無いことも「特別な魚」である要因とも言えます。
毒・危険性
人に対する毒性はありません。
王様は意外と慎重派で滅多に出会えない
夢中で海藻を食べているように見える
釣魚として非常に評価が高い
参考資料
- 日本産魚類全種リスト(分類情報)
鹿児島大学総合研究博物館
▶ 見る - JAMSTEC BISMaL(分類情報)
▶ 見る - World Register of Marine Species(分類情報)
▶ 見る - 原色魚類大図鑑 北隆館 阿部宗明監修
- 学研の図鑑LIVE魚 学研 本村浩之総監修
- 1)ヒラスズキ Lateolabrax latus の東北地方太平洋側からの初記録と環境 DNA データベースによる分布域の検討
相澤俊洋・池田 実
水生動物 第2024巻 令和6年4月
▶ 読む - 2)Larvae and Juveniles of Temperate Bass, Lateolabrax latus, Occurring in the Surf Zones of Tosa Bay,
Japan
(温帯性スズキ類ヒラスズキ Lateolabrax latus の仔魚・稚魚 ――日本・土佐湾の砕波帯に出現する個体について――)
Izumi Kinoshita, Shinji Fujita
Japanese Journal of Ichthyology,Vol.34,Issue4,1988,p.468-475
▶ 読む - 3)四万十川河口域におけるスズキ, ヒラスズキ仔稚魚の出現の季節変化と食性
藤田 真二, 木下 泉, 高橋 勇夫, 東 健作
魚類学雑誌 1988年 35巻 3号 p.365-370
▶ 読む - 4)Foraging ecology of a large opportunistic predator (adult Lateolabrax latus) on a temperate-subtropical
rocky shore
(温帯〜亜熱帯の岩礁域における大型日和見捕食者(成魚ヒラスズキ Lateolabrax latus)の摂餌生態)
Seiji Arakaki, Neil Hutchinson & Mutsunori Tokeshi
Coastal Ecosystems, Vol. 1, pp. 14-27 (2014)
▶ 読む - 5)Age, growth and reproductive biology of the blackfin seabass Lateolabrax latus
(ブラックフィンシーバス(ヒラスズキ Lateolabrax latus)の年齢・成長および繁殖生物学)
Taiga Kunishima, Shunsuke Higuchi, Yuuki Kawabata, Keisuke Furumitsu, Ikumi Nakamura, Atsuko Yamaguchi, Katsunori Tachihara, Mutsunori Tokeshi & Seiji Arakaki
Regional Studies in Marine Science, Vol. 41, Article No. 101597, 2021 (Elsevier)
▶ 読む - 6)ヒラスズキの種苗生産に関する研究報告
長崎大学プレスリリース
長崎大学
▶ 見る - 7)漁業者のみぞ知る“幻の魚” 若き大学研究員が追う「謎に包まれた産卵」完全養殖への道を切り拓けるか
TBS NEWS DIG
TBS・JNN
▶ 見る - 8)【荒磯の王者】スーパー地磯からヒラスズキに挑む!
釣りビジョンマガジン
▶ 見る - 9) フグにも鯛にも負けていない!?プロの料理人が惚れる!極上の海の幸とは?
MBSコラム(2019)
▶ 読む - 10) 鮨ができるまで「平鱸」 Sushi Prep by chef “Hira Sea Bass” #22 / Eng-sub
鮨さえ㐂 京都
▶ 読む