ヘラヤガラ

襲わないふりをする肉食魚

Aulostomus chinensis

ヘラヤガラがアイゴに密着して泳ぐのは、好意があるからではなく「付添行動」と呼ばれる捕食のための戦略です。 獰猛ではない魚に寄り添うことで、周囲の魚の警戒されることなく接近します。
また、縦になって制止する「垂直姿勢」も見られますが、真下の魚に気づかれないように待ち伏せするための姿勢だと言われています。

🔬 専門資料・出典引用(7件)

概要

和名:ヘラヤガラ

英名:Chinese trumpetfish、Trumpetfish

学名:Aulostomus chinensis (Linnaeus, 1766)

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > ヨウジウオ目 > ヘラヤガラ科 > ヘラヤガラ属 > ヘラヤガラ

【分布】相模湾以南、西・中部太平洋、インド洋

特徴・雑学

ヘラヤガラは、サンゴ礁や岩礁域、藻場などに生息し、水深数メートルから数十メートルの場所で単独または少数で生活しています。 体色には変異が多く、黄褐色、緑褐色、赤褐色など様々なタイプが見られます。 周囲の環境に溶け込む保護色となっていると言われており、海藻の多い場所では緑色系、岩礁域では褐色系の個体が目立つとされます。 また、体を垂直に保ったまま漂う行動も見られ、獲物に気付かれにくくするための捕食戦略の一つと考えられています。

全長は1メートル近くに達することもあり、体をほぼ真っ直ぐにしたままゆっくり泳ぎます。 長く伸びた口が特徴で、獲物に接近すると一瞬で口を開き、小魚や甲殻類を吸い込むように捕食します。

雑踏に紛れる?・ヘラヤガラの接近戦略

ヘラヤガラは、他の魚のすぐそばを泳ぐ「付添行動(つきそいこうどう)」(shadowing)を行うことで知られています。 付添行動には、捕食の為の捕食型、他の魚のおこぼれを狙う採餌型、外敵から身を守る保護型など、いくつかのタイプがあります。 ヘラヤガラの場合は、自らの捕食の為に行う捕食型の付添行動です。 特にアイゴやチョウチョウウオ類などの比較的大きな魚に寄り添うように泳ぎ、自らの存在を目立たなくしながら獲物へ接近します(1)

細長い体を相手の魚の体軸に重ねるようにして泳ぐことで、小魚や甲殻類から警戒されにくくなると考えられています。 これは待ち伏せだけでなく、他の生物を利用して接近する捕食戦略の一種とされています。
また、単独の魚に付き従うだけでなく、群れの中へ入り込むこともあります。 群泳する魚に紛れることで輪郭が目立ちにくくなり、獲物に接近しやすくなると考えられています。 実際に、アイゴやイスズミ類などの群れの周囲で行動する姿が観察されることがあります。

ヨメヒメジに付き添うカスミアジ クダクラゲの水中映像ダイジェスト版。様々なタイプが存在する

採餌型の付添行動と思われる

自分の影を消す・垂直で待ち伏せ

さらに、ヘラヤガラは体を垂直に保ったまま漂うことがあり、この姿勢も獲物に気付かれにくくするための捕食形態の一つと考えられています。 付添行動や群れへの侵入と同様に、細長い体形と保護色を活かして周囲に溶け込み、獲物との距離を縮める独特の隠蔽戦略です(2)

食・利用

ヘラヤガラは食用とされることもありますが、体が細長く可食部が少ないうえ、小骨が多く、一般には利用される魚ではありません。 身は白身で淡泊な味わいとされ、新鮮なものは刺身や塩焼き、煮付けなどで食べられますが、市場に流通することは少なく、地域的な利用にとどまっています。

毒・危険性

人に対する毒性、危険性はありません。

参考資料

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