アンフィスコロプス属は、脳や肛門、腸を持たない無腸動物の一種です。 体はごく単純な構造ですが、左右相称動物の進化を考える上で重要なグループとされ、左右相称動物の進化初期に分岐したグループのひとつとされます。
🔬 専門資料・出典引用(6件)
Amphiscolops sp.
アンフィスコロプス属は、脳や肛門、腸を持たない無腸動物の一種です。 体はごく単純な構造ですが、左右相称動物の進化を考える上で重要なグループとされ、左右相称動物の進化初期に分岐したグループのひとつとされます。
へんてこ生物の集まり
ただの砂の色の違いかと思ったら、一面を覆いつくす小さな生物の集まりでした。 密集して動いている様子は最初は気持ち悪いと思ったのですが、見慣れると小さな宇宙人のようで可愛く思えてきます。
このような密集が例年見られるという訳ではなく、突然起こった現象です。 なぜここなのか、どうして密集しているのかはわかりません。
概要
和名:なし(アンフィスコロプス属)
英名:なし
学名:Amphiscolops sp.
提供映像(サンプル映像は低画質版です)
分類・分布
【分類】珍無腸動物門 > 無腸目 > コンボルータ科 > アンフィスコロプス属
【分布】熱帯から温帯の浅海域
特徴・雑学
新しい「珍無腸動物門」
珍無腸動物門(Xenacoelomorpha)は、脳や肛門、循環器官を持たず、体の内部にも一般的な動物のような消化管や呼吸器官が存在しない、極めて単純な体の構造を持つ左右相称動物です。 かつては扁形動物の仲間と考えられていましたが、分子系統解析の発展によってその考えは見直され、 2011年、無腸動物類と珍渦虫類をまとめた新しい動物門「珍無腸動物門(Xenacoelomorpha)」が提唱されました。
その系統的位置については現在も研究が続いていますが、昆虫や魚類、哺乳類を含む左右相称動物の進化を考える上で重要なグループとされています。 世界各地の海に分布し、多くの種は数ミリ程度の小さな体で、海底や海藻の表面を這うように生活しています。
尖ったマント
アンフィスコロプス属(Amphiscolops)は、珍無腸動物門の無腸動物類に属する動物で、熱帯から温帯の浅い海に生息します。 多くの種は体内に共生する藻類を持ち、光を受けることで藻類が光合成を行い、その栄養の一部を利用しています。 日当たりの良い開けた海底や海藻の表面で見られることがあるようですが、映像のように密集した記録は確認できません。
属名の Amphiscolops は、ギリシャ語の「amphi(両側の)」と「skolops(棘・尖ったもの)」に由来すると考えられています。 体の後端に見られる左右一対の突起を表した名前とみられます。
アンフィスコロプスの尖った後部
▲ 学名の由来となっている
あえて単純を求めた?・無腸動物の独自の進化
アンフィスコロプス属は体表の繊毛を使って海藻や岩の表面を這うように生活していますが、体をくねらせながら短距離を泳ぐこともあります。 また、脳を持たない単純な体ながら、周囲の環境変化に応じて行動することが知られています。 多くの種は体内に共生する褐虫藻から栄養の一部を得ており、共生藻類の光合成効率を高めるため、日当たりの良い明るい場所を選んで生活していると考えられています。
このような動物と藻類の関係は「光共生」と呼ばれ、サンゴと褐虫藻の関係にも似ています。 体の構造が単純で飼育や観察が比較的容易なことから、光共生の仕組みや進化を探る研究対象として注目されています(1)。
無腸動物類は、脳や腸を持たない単純な体から、かつては左右相称動物の祖先に近い原始的で下等な生物と考えられていました。 しかし近年の分子系統解析によってその見方は大きく変わり、現在では、左右相称動物の進化の初期段階で、 人間や昆虫を含む多くの動物の系統から分岐し、独自の進化を遂げたグループである可能性が示されています(2)。
体をくねらせるように泳ぐ
▲ 泳ぐ距離は短い
謎多き雌雄同体
アンフィスコロプス属を含む無腸動物類の多くは雌雄同体で、他個体と交尾して精子を交換することが知られています。 受精後は粘液でできた透明な繭(まゆ)の中に卵を産み、その中で胚が発生します。 一方で、近縁種では体が分裂した後、それぞれの断片が欠けた部分を再生して新たな個体となる無性生殖も報告されています(3)。 アンフィスコロプス属についても同様の増殖方法を行う可能性が指摘されており、有性生殖と高い再生能力を併せ持つグループとして研究が進められています。
一方で、アンフィスコロプス属の繁殖生態には未解明な点も多く、産卵回数や繁殖周期、自然界での寿命などは十分に分かっていません。 そのため、現在も生活史や繁殖行動を明らかにする研究が続けられています。
向かい合わせになる様子や、下部に突起が見える様子が撮影された
「老化」とは何か・研究材料としての珍無腸動物
アンフィスコロプス属を含む無腸動物は、体内に多くの幹細胞を持ち、高い再生能力を備えています。 人間では加齢とともに幹細胞の働きが低下することが老化の一因と考えられていますが、無腸動物では幹細胞が長期間維持される仕組みが十分には解明されていません。 そのため、老化や再生の仕組みを解き明かすモデル生物としても研究が進められています(2)。
食・利用
食用としては利用されません。
毒・危険性
人に対する毒や危険性は確認されません。
参考資料
▶ 見る
▶ 見る
(光共生から脳再生まで:多面的な海産無腸動物 Symsagittifera roscoffensis)
Xavier Bailly, Laurent Laguerre, Gaëlle Correc, Sam Dupont, Thomas Kurth, Anja Pfannkuchen, Rolf Entzeroth,Ian Probert, Serge Vinogradov, Christophe Lechauve, Marie-José Garet-Delmas, Heinrich Reichert and Volker Hartenstein
Frontiers in Microbiology 5:498(2014)
DOI: 10.3389/fmicb.2014.00498
▶ 見る
(無腸動物類:その特徴と類縁関係、特に皮中神経類および珍渦虫類との関係について)
Johannes G. Achatz, Marta Chiodin, Willi Salvenmoser, Seth Tyler and Pedro Martinez
Organisms Diversity & Evolution 13(2):267-286(2013)
DOI: 10.1007/s13127-012-0112-4
▶ 見る
(ハワイ産アンフィスコロプス属の有性生殖と無性生殖に関する研究)
Kim, J.
University of Hawaiʻi at Mānoa, ScholarSpace(2014)
DOI: なし
▶ 見る