アカエソ|クリーニングを待つ

Synodus ulae

← 映像リストに戻る youtube版を見る➡

概要

撮影地: 静岡県沼津市 水深12メートル

分類・分布

脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > ヒメ目 > エソ科 > アカエソ属 > アカエソ

南日本、伊豆諸島、小笠原諸島、琉球列島

特徴・雑学

雄と雌でペアになっているシーンによく出会います。*1 普段は泳ぎ回ることが無く海底でじっとしていますが、獲物を捕らえる時は俊敏です。 大きな口と鋭い歯を持った肉食魚ですが、クリーナー魚であるホンソメワケベラを捕食することはありません。

映像はホンソメワケベラのクリーニングステーションで、アカエソが「順番待ち」をし、順番を飛ばされて「怒る」と考えられる行動を捉えています。
きちんと並んで大人しく「順番待ち」しているように見えるアカエソ3尾。ホンソメワケベラは手前(1番目)のアカエソからクリーニングをはじめます。 次に、真ん中(2番目)のアカエソをクリーニングをするかと思いきや、奥(3番目)のアカエソをクリーニングし始めます。
すると、真ん中のアカエソは怒ったような行動を見せ、挙句の果てには3番目に八つ当たりするような行動をします。

クリーニングを受ける為に魚が「並ぶ」という行動は実際に観察、研究されています。また、クリーナ魚が必ずしも順番通りにクリーニングを行うのではなく、 クライアント(受け手側)の大きさや、アピール行動の優劣によって順番を飛ばすことがあることも観察されています。*2
映像の3尾のアカエソは岩の隙間などの狭い空間ではなく、広い砂地のため、本当に「並ぶ」という行動をしていたのかは疑問ではあります、 また、順番を飛ばされた魚がホンソメワケベラに対して怒るのではなく、飛んだ(優先された)魚に怒るという行動をするのかどうかも謎です。

食・利用

エソの仲間は水っぽく淡泊な肉質で小骨が非常に多いために、家庭での食用には不向きとされ、未加工の状態で流通することはありません。
その一方、エソ類は日本各地で古くから食用とされ、特に「すり身魚」として重要な地位を占めてきました。*4 江戸時代の本草学書『大和本草』(貝原益軒, 1709)にも「生臭みがあり、上等な魚とはいえない。病人には食用をすすめられない。 しかし、その肉をすりつぶしてカマボコにすると美味である。」と記され、古くから加工して利用する上品な白身魚として認識されていたことがわかります。*3

細く柔らかい骨を多く含むため刺身などの生食にはあまり向かず、すり潰して加工することで真価を発揮する魚です。 日本各地の伝統的な練り物――例えば九州の「さつま揚げ」、山口の「蒲鉾(かまぼこ)」、愛媛や広島の「じゃこ天」などはいずれもエソ類を主原料の一つとしています。*5*6*7
現代でも漁獲地の周辺では、エソを「ネリミ」「ネリゴ」などと呼び、地場加工のすり身や魚肉団子、つみれ汁、揚げ天などに広く利用され、 「エソは蒲鉾の原料の中でも最高級」*8*11 とされています。
【地方名(地域)】*アカエソ以外のエソ科を含む
ヨソべ・タイコノバイ・オトコボラ(石川)*9、セエソ・セヨソ・セギス・ドンコ・ヨソ・オンノチュンバソ・フリイユ・イスイ(鹿児島)*10、 バカエソ(富山)、イモエソ(大阪)、トゥイーブ(沖縄)*12

毒・危険性

有毒腺や毒棘はありません。

参考資料

← トップページに戻る
お問い合わせはこちら