アイゴ

稚魚~成魚

Siganus fuscescens

海藻を主な餌とする魚として知られ、磯焼けの一因ともされています。 一方で、海藻だけでなく付着動物や小型の無脊椎動物、時には魚の死骸なども利用する雑食性の一面を持っています。 背鰭や臀鰭の棘には毒があり、刺されると強い痛みを伴います。

🔬 専門資料・出典引用(16件)

概要

和名:アイゴ

英名:Mottled spinefoot

学名:Siganus fuscescens (Houttuyn, 1782)

提供映像(サンプル映像は低画質版です)

分類・分布

【分類】脊椎動物亜門 > 条鰭綱 > スズキ目 > アイゴ科 > アイゴ属 > アイゴ

【分布】岩手県以南、西太平洋、インド洋

特徴・雑学

アイゴは体高の高い楕円形の体を持ち、口先がやや突き出た独特の顔つきをしています。 体色は黄褐色から灰褐色で、体側には細かな斑点や波状模様が見られます。 成魚は全長30cm前後まで成長し、岩礁域や藻場でよく見られる身近な魚です。 背鰭・腹鰭・臀鰭の棘条には毒腺があり、刺されると強い痛みや腫れを引き起こします。 命に関わるほどの毒ではありませんが、症状が長時間続くこともあるため注意が必要です。 漁業者や釣り人の間では、取り扱いに気を付ける魚として知られています。 アイゴの名前も、その鋭い毒棘に由来し、「毒を持つ魚」を意味するとされています。

したたかだからこそ繁栄するのか・アイゴの雑食性

アイゴは成長に伴って食性が変化する魚です。 浮遊生活を送る稚魚の時期には、主に動物プランクトンを食べて成長します。 その後、浮遊生活を終えて着底した若魚は、岩や海藻の表面に生える付着藻類や芝状藻類を盛んに食べるようになります。 実際に、小型個体(全長60~110mm)の胃内容物を調べた研究では、摂餌内容の大部分が藻類で占められていました(1)。 さらに成長すると、付着藻類だけでなく大型の海藻も利用するようになり、成魚では海藻が食生活の中心となります。

アイゴは「海藻を食べる魚」として知られていますが、実際には完全な草食魚ではありません。 小型の動物や有機物も利用する雑食性の一面があり、必要に応じて動物質の餌も取り入れています。

実際に、トウゴロウイワシが大量死した際には、海底に沈んだ死骸をアイゴが食べる様子を観察しました。 近年の飼育実験では、褐藻だけを与えたアイゴよりも、オキアミやヨコエビ類などの動物質を与えた個体の方が体重の増加が大きく、良好な成長を示すことが報告されています(2)。 アイゴにとって動物食は単なる「つまみ食い」ではなく、栄養面で重要な役割を果たしている可能性があります。 この行動は、アイゴが海藻だけに依存するのではなく、周囲の環境に応じて利用できる餌を柔軟に取り入れる、したたかで適応力の高い魚であることを示しています。

大量死したトウゴロウイワシを食べるアイゴ 死んだトウゴロウイワシを食べるアイゴ

内臓部分を選んでいるようにも見える

地域によって差のあるアイゴの利用

アイゴは各地で食用とされる魚ですが、とくに沖縄では古くから親しまれてきました。 初夏に沿岸へ集まる稚魚は「スク」と呼ばれ、群れで接岸したところを網で漁獲する「スク漁」が行われます。

獲れたスクは塩漬けにされることが多く、島豆腐の上に載せた「スクガラス豆腐」は沖縄を代表する郷土料理として知られています。 塩味の効いたスクガラスは、そのまま酒の肴としても利用されます(3)

成長したアイゴも各地で食べられており、沖縄では「エーグヮー(エーガー)」などの名で呼ばれています。 地域によって塩焼きや煮付け、干物などさまざまな調理法がありますが、沖縄では塩だけで味付けする「マース煮」がよく知られています。

また、徳島県や香川県など播磨灘沿岸では、小型のアイゴを丸ごと塩焼きや煮付けにして食べる習慣があります。 海藻を消化するために発達した長い腸は、その形から「うずまき」や「ぜんまい」と呼ばれ、身よりもこの内臓を好む人もいるほどの珍味として親しまれてきました(4)。 とくにアマモを食べて育った個体の内臓は美味しいとされ、地域特有の食文化を形成しています。 独特の香りから好みが分かれる魚でもありますが、沖縄から瀬戸内海まで各地で利用されてきた身近な食用魚です。

磯焼けとアイゴ

アイゴは海藻を主食とする植食性魚類であり、近年は海水温の上昇とともに分布域や活動期間が拡大しています。 その結果、各地の藻場で海藻への食害が増加し、ブダイ類やウニ類と並んで磯焼けの要因の一つとして注目されています。 とくにアラメやカジメなどの大型海藻群落では、アイゴの群れによる継続的な摂食によって藻場が衰退・消失する事例が報告されており、西日本を中心に深刻な問題となっています。

こうした状況に対し、全国各地でさまざまな対策が行われています。 植食性魚類の重点的な漁獲や駆除のほか、海藻を保護するための防除ネットの設置、海藻の移植や種苗投入による藻場造成などが実施されています(5)。 また、高水温に強い海藻種の活用や、海藻を食べるウニの個体数管理など、生態系全体を考慮した取り組みも進められています。

さらに近年は、駆除したアイゴを有効利用する動きも広がっています。 各地で食用としての利用が見直され、加工食品や飲食店での活用が進められているほか、磯焼け対策と地域振興を両立させる取り組みも行われています。 かつては厄介者として扱われることの多かったアイゴですが、現在では藻場再生と水産資源の有効活用を結び付ける存在として注目されています。

アイゴの地方名

食・利用

アイゴは海藻を盛んに食べるため、磯焼けを進行させる要因の一つとされ、各地で捕獲や駆除が行われています。 しかし、毒のある棘や内臓の臭い、下処理の手間などから、地域によっては食用とする習慣が無く、市場価値がつきにくいため、捕獲しても廃棄されることが少なくありません。

駆除したアイゴを利用する・様々な取り組み

そこで近年は、駆除したアイゴを単に捨てるのではなく、食品として有効利用する「食べる磯焼け対策」が各地で進められています。 広島県福山市と食品宅配事業者のオイシックス・ラ・大地は、連携事業として捕獲したアイゴを利用した「香草オイルで熟成させたアイゴのコンフィ」を商品化しています(6)

三重県産のアイゴを利用した商品としては、コープ自然派による「白身魚チーズ巻き」や「白身魚ハーブフライ」も販売されています。 また、三重県では高校や食品事業者と連携し、アイゴなどの低利用魚を使った新商品やメニューの開発が進められています(7)

愛媛県では、漁獲後の処理を工夫して臭みを抑えたアイゴを「琥珀あいご」として商品化する取り組みが行われています(8)。 大分県では「#アイゴプロジェクト」が展開され、Soup Stock Tokyoと連携した「アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース」など、新しい料理も開発されました(9)

このほかにも、アイゴの干物やムニエル、フィッシュバーガー、フライなどが各地で試作・販売されてきました。 ただし、一時的なイベントや限定販売で終わる例も多く、漁獲物の安定供給や処理設備、販売価格などが課題となっています。 アイゴを継続的に利用するためには、料理を開発するだけでなく、捕獲から下処理、加工、流通、販売までを結び付ける仕組みづくりが必要とされています。

毒・危険性

アイゴの背ビレや尻ビレなど、棘条には毒があります。 近年の研究では、アイゴの棘の毒は強い痛みや腫れを引き起こすだけでなく、その毒素の構造がオニダルマオコゼ類の毒とよく似ていることが明らかになりました(10)。 アイゴの毒は致命的なものではありませんが、刺されると激しい痛みが長時間続くことがあります。
刺された場合は、まず傷口をよく洗い、やけどをしない程度の温かい湯に患部を浸すことで痛みが和らぐことがあります。 症状が強い場合や腫れが広がる場合、体調に異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。

ウツボらしき咬み跡のあるアイゴと、腹をちぎられた後に治癒しているアイゴ ウツボらしき咬み跡のあるアイゴと、腹をちぎられた後に治癒しているアイゴの水中映像

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ヘラヤガラに「付添い行動」をされるアイゴ ヘラヤガラに付添行動をされるアイゴ

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参考資料

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